明日、雪うさぎが泣いたら
・・・
《……姫は、どちらの道を行かれるのでしょうか》
小雪の足音が聞こえなくなってから、更に間をおいて妖狐が問うた。
「何となく、想像できる気がしますがね。何も言わないでおきましょう。母である私が口にしていいのは、どの道であろうとあの子たちが幸せでいてほしいということだけです」
少しばかり突き放した口調で、しかし、寂しげな目をした七緒に苦笑しながら雪狐は言う。
《大丈夫ですよ。姫は自分で幸せを見つけて、掴まえることができる人です。私のような得体の知れないモノに頼らずとも、もう大丈夫》
彼女はもうあの頃のような、甘えん坊で外からの贈り物を待っているような子供ではない。
自らの幸せを探して見つけて、もしも見当たらなくても作っていける。
「ええ、そうね。でも、それでも願ってしまうのよ。だって、親ですもの」
《もちろん、そうでしょうとも。安心なさい。その親心は、御仏にきっと届きます。私にはもうとっくに。……ですが、六つ花の君》
ピクンと肩が揺れたのは、呼ばれなくなって久しい名が昔を思い起こさせたからか。その声が厳しく聞こえたからか。
「分かっています。今はあの子を信じて、見守るだけ」
ずっと自室にいたはずだが、小雪はまた外に出たのだろうか。
俯いた先に、雪華が辛うじて形を残している。
どれくらいそうして見ていたのか、やがてふっと淡く解け――滴がすうっと細く消えていった。