明日、雪うさぎが泣いたら



・・・



瞼が熱い。
泣いていたのかと、目を瞑ったまま頬に触れて確めてみたが、そうじゃなかった。
あの夢を見ていないか、夢に泣かされてはいないかと心配して、瞼を這う指が熱いのだ――そう思い当たった瞬間に、本当にぽろっと涙が落ちた。


「大丈夫だ。お前のことは、私が絶対に守る。……絶対だ」


決意に満ちた声、奇しくも夢とほぼ同じ台詞にふるふると首を振る。

違うの。
もう十分すぎるほど、私は守ってもらえた。
だから、そうじゃなくて。
早く、その呪縛から逃れてほしい。


「……まだ、その日が来るまで……」


眠っているのに安心して、不用意な内容を漏らしてしまった。
まるで、そう思ったみたいにハッと指の動きが止まる。
意識がここにあるのがバレただろうか。
なぜヒヤリとしたのか分からぬまま、やがて恭一郎様の気配はなくなってしまった。


「ん……」


目を覚ましていいのか尋ねる為に、わざと声を出してみる。
たった今起きましたという、下手くそな演技の必要もなく、やはり恭一郎様の姿はない。


(どういう意味だろう……? )


その言い方では、まるで再びあの扉が開くのを知っているみたいに聞こえる。
考えすぎだろうか?
もしも、そうではないのだとしたら、どうして――……。


「そこで、何をしていらっしゃるのですか」


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