明日、雪うさぎが泣いたら
「構うものか。こいつは、お前が聞いていると知ったうえで俺を煽った。お前が一番辛く、手っ取り早く事情を知る手段をわざと選んだんだ。そのどこに、話を子供用にする必要がある」
一彰の瞳が苦しそうに揺れ、それでも逸らすまいとこちらを見下ろしている。
「……でも、この子の言うとおりだわ。普通では考えられないほど、一緒に過ごしてきたのに。何も知らないまま今日までいられるなんて、暢気としかいいようがない。……そんな……そんなことに、私は……」
口にはできなかった。
こんな酷い嘘を吐く人間はどこにもいないと分かっているのに、二人を疑いたくてしようがない私は最低だ。
「……こんな形になって、悪かった。言ったとおり、お前が知らないでいたことは恭の希望どおりだったんだ。だから、自分を責めるな」
遠慮がちに肩に触れた手がぎこちない。
こんなふうに一彰と話すのは、いつ以来だろうか。
「知られたくないあいつの気持ちも分かるし、恭の友人としては俺は後悔していない。……だが、お前の友人としては言うべきだったと……もっと早く言いたかったと思ってる」
いつもの悪口や憎まれ口ではなく、私を友人だと言ってくれた不器用な優しさが、それが嘘でも冗談でもないことを証明している。
「……一彰は悪くない。私……私が……っ」
――どんなに信じたくなくても、真実なのだと。
「……っ……夢なんて、見てる場合じゃなかったのに……っ」
そう告げられても、まだ頭は拒もうとしてやめない。
そういえば、雪の結晶は六つの花弁の形をしているのだと、昔兄様が教えてくれた。
こうして、皆の上ではらりと舞っている雪すべて、そうなのだろうか。
だとしたら、今私の頬の上で解けた雪花は――一体、いくつ花弁が散ったのだろうと。
そんな、ちっとも逃避にならないことばかり、浮かんでは解けるように消えていくのだ。