明日、雪うさぎが泣いたら
氷柱
今になって、涙が止まらない自分が大嫌いだ。
「……小雪、もう部屋に戻れ。後は、俺から恭に話しておくから」
(そんなの、だめ)
ちゃんと私から切り出し、説明を受けるべきだ。
そう伝えたいだけなのに、言葉はおろか声にすらなってくれない。
自分に腹が立って意地になればなるほど、口から漏れるのは音とも言えないような嗚咽ばかり。
「……何を驚くことがある。そんなに意外か? こいつが、これほど恭のことで泣くのが」
「……っ」
一彰もあの子も、何も見えない。
呻きながら首を振るだけの私の背中を、一彰が不器用に叩いた。
「小雪……!? 」
騒ぎを聞きつけ、長閑が慌てて駆けてくるのが聞こえた。
ああ、そんなに急いだら転んじゃう。
私よりもずっと、長閑の方がそれに慣れていないのだから。
「長閑、小雪を休ませてやってくれ。訳はあとで話す」
「え、ええ……」
労しげに見下ろす瞳と、私をいつもの渾名で呼ばなかったことで、事態は深刻だと悟ったのだろう。
今は何も訊かずに、そっと私の肩を包み込んだ。
「……ま、待、って」
全く力の入らない足を自分で叩き、半ば長閑に引きずられるように歩いていたのを、どうにか踏ん張る。
「……ごめんなさい」
私に腹が立つのは当たり前だ。
私自身、自分がこんなに憎くて堪らないのだから。
「お前が謝る必要はない。いいから、今は休め。恭と話すつもりなら、そんな状態で挑んだって言い負かされるのがおちだ」
一彰が私に甘いと、いっそう不安になる。
慣れないことはしないでほしいと言ったら、怒るだろうか。
だって、それでは――その言い方では、恭一郎様の容態は――。
「こいつは、俺がしめとく。最初からこれを狙ってお前に近づいたのなら、質が悪すぎる」
「……よせ」