明日、雪うさぎが泣いたら
・・・
あれから、幾日か経ち。
恭一郎は、小雪の様子がおかしいことに、もちろん気がついていた。
無理もない。
ここしばらく、実に様々なことが彼女の身に起きた。
雪狐と名乗る妖怪との出会いに始まり、何年も兄だと信頼しきっていた男から告白されたと思ったら、淡い恋心を抱いていた男からは再会を拒まれ――憧れから恋へと移り変わったのが怪しい相手に――本人は否定してくれるだろうが――奪われたのだ。
小雪の性格からして、宣言どおりにじっとしてなどいないだろうし、彼女自身の意思だと言ってくれるのも分かっている。
しかし、どうあっても、混乱と悲しみでごちゃまぜの感情につけこんだのは事実で、否定のしようも、またするつもりも全くなかった。
だから、小雪がこの身を心配してくれて、ぎゅっとしがみつくのも、ごく普通の反応だと思っていたのだが。
(……そういえば)
このところ、あの狐の姿がない。
小雪といない時も、何だかんだと小言を言いに現れていたのに。
「……まさか……」
小雪に頼み込まれ、あの扉を開けようとしているのでは?
どこまで彼女が、記憶を取り戻したのかは分からない。
恐らく、要となる部分はバレていないはずだ。
そうだとしても、それらの端々を繋ぎ合わせ、彼女なりにあの時起きた概要を察して入るのでは――。