明日、雪うさぎが泣いたら
「……狐も一緒か? 」
長閑の言うように、ここに小雪を止められる者はいまい。
小雪はここで、この世界で確かに愛されているのだ。
「いいえ、あの子は一人で向かいました。その後、雪狐も煙のようにいなくなって」
小雪は、雪狐にも頼らなかったのか。
強くなった。
いや、強くあろうと、自分の足で立ち、動かねばと。
一緒に裏庭に行こうなどと、もう自分を誘ってくれることもないのだろう。
頼ってくれたら、よかったのに。
自分を助けようと飛び出したのに、こう思うのは矛盾しているか。
それでも、頼って甘えてくれたなら。
そうでないと、小雪の方が儚く解けてしまいそうで恐ろしくなる。
「出掛けてくる」
「……恭一郎様」
確かに、こうしていても時間の無駄だ。
万が一にも、扉が開いてしまったら。
何かの原因で、二度とこちらへ帰ってこられなくなったら――。
そんなことは許さないと、あの日誓ったのだ。
何者だろうと、そんなことは絶対にさせない。
「あの子の幸せに必要なものは、夢ではなかった。小雪はようやくそれに気づいて、取り戻そうと頑張っています。……病のことは、お二人の力だけではどうにもならないのかもしれない。かなりの幸運だって、ご加護だってないと難しいのかもしれません。でも」
――それを、貴方が壊したりしないで。
壊したいものか。
助けたくて、守りたくて、あの日小雪をおぶっていたはず。
その後、抱いたままけして離さなかったことを、正当化するつもりは毛頭ないけれども。