明日、雪うさぎが泣いたら
『痛……』
(男の子……? )
認識してしまうと、一気に恥ずかしくなってしまう。
知らない男の子とおでこをこっつんこ――というには、あまりに可愛らしすぎる音だったけれども。
拍子に思わず彼の腕を握ってしまったし、それに温かい何かが弾みで頬を掠めたような。
『……ご、ごめん! 大丈夫? 』
別に、彼は何も悪くないのに。
見たところ、彼は彼で状況を飲み込めていないようだ。
それでも謝って恐る恐る手を差し伸べてくれたのは、相手が自分よりも小さな女の子だったからだと思う。
『う、うん。私こそ、ごめんなさい』
遠慮がちな彼の手に比べ、私が何の躊躇いもなくその手を取ったのは、私が心底信頼していて後に大好きになるから――それは、後付けが過ぎるだろうか。
『今……どこから来たの? 』
彼は、とても不思議な格好をしていた。
さっき咄嗟に掴んだ着物は、今まで触れたことのない手触りをしている。
髪だって、彼の年頃でそれほど短いのは珍しいと思う。
『分からない。こっそり部屋を抜け出したと思ったら、いきなり光って。気がついたら、何でか女の子とキ……』
『き……? 』
不自然に途切れた単語の続きを探したけれど、私には心当たりがなくて首を傾げた。
『……っ、ふ、不可抗力だ!! わ、わざとじゃないんだからな! ……で、でも、その……ごめん』
『……何が?? 』
彼の言葉は、難しすぎてよく分からない。
なぜ急に怒って、そのくせ謝ったりするのだろう。
『…………何でもない。こんな小さい子に、そんなの分かるわけないのに。馬鹿じゃん。俺』
損したと言わんばかりの彼に、ムッとする。
子供扱いされたことだけは何となく理解できたし、実際、彼の言う意味は全く分からなかったから。