明日、雪うさぎが泣いたら

(そう、ここだ)

かくれんぼは、絶対ここで鬼を待つのだと決めていた。
そうしたら、優しい鬼はいつもある程度の時間探すふりをした後、私が泣き出す前に見つけてくれるの。

(あの頃も欲張りだったなあ。見つけてほしいくせに、ドキドキする時間も欲しいなんて)

私はここしか隠れたことがないのに、

『さゆ?んー、こっちかな?』

って。
今思えば、かなり下手くそな演技だった。

「懐かしい……」

無意識のうちに、そっと掌が幹に触れた。
あまりに懐かしくて、何か、ずっと忘れていたものが一気に押し寄せてきたようで。
日の差さず、少しひんやりした感触を味わう間もなく、私はぎゅっと目を瞑った。

「小雪!?」

なぜ目を閉じたのか理解する前に、兄様が叫ぶように私を呼ぶ。

(……っ、なに……!?)

眩しい。
必死に目を開けようとしても、あまりの光の強さに瞼が許してくれなかった。


(でも)

目を痛める感じはしない。
眩しいだけで、熱くも痛くもなく。
突き刺すというよりは、いつしかふんわりと全身を包まれているようで、どこか守られているような気すらするのだ。


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