明日、雪うさぎが泣いたら
「……っ、やっぱり……!!」
兄様は、こうなることを予想していたのだろうか。
ああ、でも、やっぱり。
(心配しないで。悪いものなんかじゃないから)
そう言いたいのに、声にならない。
瞼からも力が抜け、心地よく微睡んでいるように抗えない。
「馬鹿、しっかりしろ!小雪、お前は……」
私は、何?
大丈夫。言ったでしょう、兄様。
もし、私がまた誰か、どこかに召されるようなことがあったとしても、不幸だとは思わないで。
「小雪、行くな。お前は、お前のいる場所は……」
悲鳴にも似た声に、一瞬光の外へと意識が戻る。
それではいけないと、何度も思ったのに。
もうやめると、いいかげん踏ん切りをつける為にここに来たというのに。
私の気が逸れたからだろうか、穏やかで優しい反面強固に思えた光の壁を抜け、兄様の手が伸びてくる。
「行かせるものか。もう二度と、あんな思いをするのはごめんだ」
いつの間にか、兄様の胸にぴったりと私の額がくっついている。
ちっとも離れてくれないのが恥ずかしくて視線を落とせば、兄様の袖が震えていた。