明日、雪うさぎが泣いたら
「……やはり、こうなるのか。ならば、仕方ない」
私の視線を追ったのか、気持ちを沈めるように息が吐かれた。
「これだけは、すまいと思っていたが。そうも言っていられないようだな」
震えが治まり、声も落ち着きを取り戻している。
でも、続けた台詞はどうも穏やかではなさそうだ。
「待って、兄様。あれは、何の害意もなかったわ。きっと……そう、何からか守ってくれたのかもしれません」
「何から?」
うっと詰まると、ほら見ろと言わんばかりにもうひとう溜め息が降る。
この前と同じように躊躇いがちに頭に手を置き、でも、何かを決意したように滑らせ、私の髪を一房指に絡め取った。
「だとするなら、私からということだろうな。本当に、ここにそのお前の初恋の相手がいるなら」
「いえ、その、それは……」
どう言っていいのか分からないし、兄様の言葉の意味も理解できない。
何の脈略もなく発せられたのもあるが、間違いなく髪を取られ軽く拘束されているせいだ。
「もう、お前がそれを庇うのを見たくない。言っただろう、私はそれを滅してやりたいのだ。どんな手段を使っても、お前の中から永遠に」