明日、雪うさぎが泣いたら
鬼ごっこ
どこをどう帰ったのか、よく覚えていない。
もちろん、来た道を戻ってきたのだと思う――兄様と一緒に。
裏庭に入る時と同じく、けれどもひどく申し訳なさそうに私の手を引く兄様は、本当にあんなことを言ったのだろうか。
あまり見ないようにしていたのに、その表情が頭から離れない。
あの、告白とも命令とも取れる内容は、どこか現実離れしているというのに。
(……うそだ。そんなことって)
あれから、どれくらい経ったか。
すっかり夜も更け、自室でだらしなく寝っ転がった私は、もう何度目か手の甲を瞼に押し当てた。
『分かっている。最低なことだ。体裁も悪いし、何よりお前を傷つけ、将来を奪う。……だから、ずっと見送ってきた』
無理やり真っ暗にしたって、起きたことから逃れられるわけじゃない。
寧ろ、いっそうそれしか考えられなくなるのに、私はぐるぐる同じことをし、思い巡らせていた。
『……そ、そんなこと……。兄様はそれでいいんですか!?兄様は、そんな……』
同じ単語を繰り返すしかできない。
さすがの私も、その先を尋ねる勇気がでなかった。
――さっき、あんなに意地悪な顔で、あんなことを言ったくせに。今は、そんなに辛そうな顔をしているじゃないですか、兄様。