明日、雪うさぎが泣いたら
・・・
(……またか)
伸ばしたままの腕を見上げ、何かを掴めなかった指先をぼんやりと眺めた。
「小雪、まだ寝ているの?いい加減、起きたらどう?」
長閑の声が聞こえ、慌てて布団から飛び起きた。
この前、言われたばかりなのだ。
『そんなに起きてこないなら、朝餉を作らせては勿体ないわね』
と。
長年の付き合いだ。これが単なる脅しでないことは分かっている。
「長閑、待って!起きてます……!起きてますから、朝餉は残しておいて!!」
一応はこの邸の姫である私の、何て情けないことだろうか。
しかし、幼馴染みである彼女はやると言えばやる。
普段は名前通り穏やかであるが、怒るととんでもなくめんどくさい。
そして、意外と沸点は低いのだ。
まあ、そんなところも大好きなのだが。
それに、寝坊が過ぎる私は何も言えない。