明日、雪うさぎが泣いたら
・・・
(うう……)
のそり。
怠い体をどうにか起こし、重い瞼をこじ開けることに成功した。
また、あの夢だ。
見るのが怖いと思うこともあるけれど、見てしまえばやっぱり嬉しい。
《姫? 大丈夫ですか? 》
「大丈夫。いつものことだから」
起こそうか起こすまいか、迷っていたのだろうか。
右往左往していたらしい雪狐が、私が目を覚ましたことに気づき駆け寄ってくれる。
《貴女にとっては吉夢のようでも、同時に負担も大きいようですね》
「どうかしら。どちらにしても、起きて見えているこの現の方が夢みたいよ」
さすがに凶夢とまでは言わないが、最近の目を開けた状態で見るものの方が現実離れしている。
「おはよう。……顔色が良くないわね。薬湯を頂いて来ましょうか? 」
長閑が部屋に入ってすぐそう言うくらい、起き抜けの私は酷い顔をしているらしい。
悪夢を見た訳ではないのに、どうしてだろう。
「ううん、平気。……耳に入れたくないから」
またあの夢を見たと知ったら、何と言われることか。
心配からなのは分かっているし、有難いけれどこれからは訳が違う。
兄に心配されるのと、知らない男性から気に掛けてもらうのとでは。