明日、雪うさぎが泣いたら


「前も言ったけれど、きちんと手入れすればもっと美しいのに」

「だって、苦手なんだもの」


でも、どうしてだろう。
今日は珍しく、そんな気分になった。
あの子の夢を見たからだろうか。


(うん、きっとそう)


そういえば、あの後。
確かにあの子は贈り物をしてくれた。
短い髪でも似合うような、とても可愛らしい髪飾り。
それがとても物珍しくて、何よりも彼から貰えたのが本当に嬉しくて。
何度も何度もその瞬間を思い描いては、鏡の中の自分を眺めたのだ。


『あれ。さゆ、自分で着けたの? 下手っぴだな』


後日、ちゃんと髪に着けた私を見て、くすぐったそうに言った気がする。


(いいの、これで合ってるの)


だって、ほら。
あんまり後ろに着けると、自分で見れないんだもの。


『大事にするね。大人になって髪が伸びても、ずーっと着けてるから。だから、忘れないで。もし、もし、忘れちゃっても……この髪飾りを、さゆの目印にして』


――さゆ、大人になっても絶対に失くさないから。


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