明日、雪うさぎが泣いたら
南天
今日も雪が降っている。
これほど分厚い雲が空を覆っていて、しんしんと降り積もるのを見るとさすがに雪景色を楽しむどころではない。
これが夢だからだろうか。
それとも、私の記憶が曖昧だからだろうか。
何にせよ、辺りは真っ白だ。
白の世界に浮かび上がるのは、あの男の子と私と、赤い南天の実。
『さゆ。さゆは、うさぎを溶かしちゃいたいの? 』
言おうか言うまいか、恐らくしばらくは好きにさせてくれていたのだろう。
雪うさぎを作り始めてから、いつまで経っても仕上げることができない私に言った。
『……だって……』
だって、これを作り終わったら帰っちゃうでしょう? ――そう言い返してしまえば、さっさと終わらせないといけなくなる気がして。
私は、雪を丸めては少し崩すのを繰り返していた。
『ほら、手伝ってあげる……』
『……いや!! 』
わざと緩く握っていた雪が、彼に奪われまいと隠した拍子にぼとぼとと崩落した。
『……あ……』
さっきまで真っ白だったものに茶色が混じり、酷く罪悪感が襲ってくる。
私は幼かった。
見た目どおりの子供だったけれど、分かってはいたのだ。
彼と過ごす夢のような時間は、そう長くは持たないのだと。
どれほどゆっくり時を感じようとしても、いずれは淡く解けてなくなってしまう。