魔界の華は夜に咲く
長い丘の階段を上ると見晴らしのいい公園が見えてきた。

花壇には花も咲いている。

街並みが見える場所にベンチがあった。


「ここでいいだろう」


手でどうぞと促され、ベンチに座る。

アルヴァンも隣に腰かけた。


「ちょっと食べ過ぎたな。これは夕食は少な目がいいな」


「ふ・・そうですね。お腹いっぱいです」


気さくなアルヴァンに思わずほだされる。

警戒しているつもりなのにいつの間にか気が緩む。

不思議と落ち着く声だった。



「あの・・私の件はパパに言われたからですか?・・奥さんがいるのに」


「んー。まあ、もともとそんなに愛はないんだ。お互いにな」


「・・え?でも娘さんも居るのに」


「フフフ・・純粋だな。センジュは。愛が無くても体を繋げる事は出来るよ」


ドキッ


「え・・」


「人間にもいるんじゃないか?そういうの」



_確かにできちゃった婚の話はよく聞くけど・・。



「俺と妻は同じ戦に出た時に酒場で意気投合して、たまたまそうなっただけだ。それはあいつも理解してる」


「でも・・」


「今回のお前の件も何も言ってこなかった」


「言えないだけじゃないですか?パパの命令だから」


「いや、2人とも仕事が忙しいし、一緒に居ても別行動だし、ほぼ会話もない。
お互い相手の事をなんとも思ってないよ」


「そんなのって・・」




_そんなの・・娘さんが可哀そうだよ。笑顔がない家だなんて。


しゅん。

と落ち込んでしまったセンジュの肩をアルヴァンは抱いた。


「お前がそんな顔する必要ないだろう?お前には関係ないんだから」


「ですけど・・」


_そんな話聞いたら元気もなくなるって。ドライな関係なんて私は嫌だな。




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