魔界の華は夜に咲く
屋敷の門前に馬車を止め、アルヴァンはセンジュを馬車から降ろした。


「ここから歩くぞ」


「はい・・」


_うぅ・・逃げ出したい思いなんですけど本当は。



だだっ広い庭には両サイドに噴水があり、バラが咲き乱れていた。


「広いですね・・」


「ん?そうか?フォルノスの屋敷の方がデカいぞ」



_これで!?フォルノスの屋敷って一体どんだけ敷地があるの!?玄関に着くまでで疲れちゃうよ。セヴィオの屋敷も凄かったけど・・もっと広いし!



キョロキョロしながら歩いていると前から小さい子が走ってくるのが見えた。


「おとうしゃまー」


「お、リディ!」


どうやらアルヴァンの娘の様だ。

栗毛色の巻髪が風に揺れている。

目もまん丸で可愛らしい。

アルヴァンは娘の頭を撫でるとセンジュに楽しそうに紹介した。


「娘のリディだ」


「こ、こんにちわ」


_可愛いけど、小さな子と接した事ないからどうしたらいいのかわからない~。


リディは困っているセンジュに首を傾げた。


「このしとだあれ?」


「魔王様の娘センジュだ。お姫様だよ」


アルヴァンの言葉にリディは目を輝かせた。


「おひめしゃま!?すごい!!」


「凄いだろう。仲良くしてもらいなさい」


「わああい!」


抱きっ。


センジュの膝にリディは抱き着いた。

コロコロしてとても可愛い。



_あ、ヤバい。可愛すぎるかも。



「ひめしゃまギュッてしてー」


ニコニコキラキラされ、拒否できるわけもない。


きゅっと抱きしめると、甘いキャンディの香りがした。



_小さくて、柔らかくて、ああ・・癒される~~!!!



いとも簡単にメロメロになってしまった。


「ふ・・ククク・・」


それを見てアルヴァンは楽しんでいる。

策略だったのだ。

思惑通りに動いている事に喜びを感じていた。


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