魔界の華は夜に咲く
「まだお前は戸惑ってばかりだろう。ベリオルロス様に連れられて魔界へ来たばかりだし、
突然伴侶を決めろと言われてもな」


「は、はい」


「だが、王女である以上は・・覚悟を決めて欲しい。この魔界を繁栄させるために、
王女として自覚をもって伴侶を決めて欲しい」


「・・・王女だから、ですか」


「そうだ。だが決してロボットの様に心の無い者になれとは言わない。お前にも幸せは掴んで欲しいからな。
4人と深く知り合い、愛を知って欲しい」


「セヴィオが言ってました。選ぶのは私だって」


「そうだ。お前が幸せになれる伴侶を4人の中から選ぶんだ」


「でも、フォルノスが私が誰かを選んだら均衡が崩れるって」


「あいつは冷静な割に心配性でもあるからな。今後を見据えて未然に処理をしたいのだろう。
だが、そんなの気にしなくてもいい。お前には人を愛する権利があるからな」


「・・はい」




ギュッと握られた手は大きくてゴツゴツしていた。

魔界の為に逞しくなった手だとセンジュは思った。


「ありがとうございます・・そう言ってもらえて、ホッとしました」


「それはよかった」


ニコリ、と釣り目が優しく微笑んだ。


「パパはなんでママだったんだろうって思いました・・。あんなに好きそうなのに、
ママと私を置いて行ってしまったのは何でだろうって」


「あの方は魔界の王だからな。しかしお前に会ってからのあの様子は・・
幸せの絶頂といったところだな。恐らくは・・」


「?」


「いや、これは俺の口から言う事ではない。今度あの方に直接聞いてみるがいい」


「・・はい。そうしますね」


センジュは素直にコクリと頷いた。

< 108 / 289 >

この作品をシェア

pagetop