魔界の華は夜に咲く
「うぐっ・・」


腰にナイフが刺さったがセレーンはそれでも抵抗した。


「てめえ!」


「ヤレ!!」



ドオオオオン!

男達がセレーンに刃を向けた瞬間、雷が鳴り響いた。


「ぎゃあああっ」


ナイフが避雷針となり男達は焦げてその場に倒れた。

その雷はアルヴァンの力だった。

セレーンはその場で崩れ落ちた。


「セレーン!!」


アルヴァンとセンジュが駆け寄ると、セレーンは苦痛に顔を歪ませつつも笑った。


「クク・・馬鹿やっちまったね・・あたし」


「セレーン・・」


セレーンは一度だけセンジュを見ると自分の目からじわりと溢れ出る涙に驚いた。

夫であるアルヴァンが遠い存在に見えた。



「早く手当てを!」

アルヴァンが傷口を確認しようとするとそれをセレーンは拒否した。


「いいんだよ・・もう」


「何言ってる!」


「フフ・・これは罰さ」


「お前・・」


「あんたとの関係をちゃんとしなかった私の罰・・」


セレーンは痛みをこらえる様にアルヴァンの袖を掴んだ。


「あんたの身分を利用して贅沢した上にさ、男と遊んでた・・知ってるだろ。結果それが・・最悪の事態を招いちまった・・」


「・・・」


「今まで・・悪かった・・リディだけは取られたくないってワガママ・・う・・言って」


「もういいから!喋るんじゃない!」


セレーンを支えるアルヴァンの手が震えている。

それを否定する様に全身に力を込め、自分を保った。


「お前とは同士だった。背中を預けられる存在だった。今でもそう思ってる」


「は・・ハハ・・馬鹿・・だねぇ。ちょっとは女として扱ってくれたらあたしも変わっていたかもよ」


「・・そうだな・・すまなかった」


「いいよ。あたし達は、そういう関係・・だから・・」


ぱさり。

とセレーンの手は力なく地面へ落ちた。


「・・・・」


「あ・・アルヴァン・・さん?」


「・・・・」


「アルヴァンさん!急いで手当しないと!」


「もう、逝った。手当は不要だ」


「そんな・・・そんな!」


_人が死んだ・・目の前で・・・リディちゃんも侍女さんも奥さんも・・!!


3人だけではない。敵も複数人地面に倒れている。


めまいで倒れそうになるのを必死に堪えた。


_これが・・魔界・・これが・・私の生きる場所なの?









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