魔界の華は夜に咲く
_罰が当たったんだよ、フォルノス。昨日あんなことしてたから。
冗談まじりでそう思いたかった。
目の前で誰かが苦しんでいる。
昨日もリディやアルヴァンの妻が亡くなってしまうところを見ている。
息が出来なくなるほど悲しくなった。
「死なないでよ・・私に色々教えてくれるんでしょ?」
とフォルノスの右手に触れた。
指をそっと触る。男らしくも綺麗な指をしている。
「はぁ・・」
苦し気にフォルノスは大きな息を吐いた。
「・・・お前・・か」
「フォルノス・・起きたの?」
「何故・・ここに」
今にも泣きだしそうになってしまった。
「フォルノスが訓練所に来ないから・・」
「ああ。そうか・・・」
ゆっくりとフォルノスは目を開け、泣きそうなセンジュの頬に指で触れた。
「弱虫が・・」
「そんなこと・・言ったって・・勝手に出てくるんだもん」
「まったく、魔王の娘ともあろう者が・・」
そう言ってフォルノスはまた目を閉じた。
痛みと悪寒に震えている。
_よかった。話が出来るって事は回復してるって事だよね?
「先生を呼んでこようか?」
「いや、いい・・平気だ」
「そんなに顔が青いのに・・」
「余計な真似をするな・・」
フォルノスはセンジュの指を力なく握った。触れる程度だ。
ドキン
「折角だ。看病でもしてもらおうか」
「え・・えっと・・」
「嫌そうだな」
「そんな事_」
脳裏に何故か昨日の事がよぎってしまった。
_な、なんで思い出すの、こんな時に・・。
「冗談だ。お前が俺の事を嫌いなのは知っている。無駄な情けをかけるな」
「え・・」
「かけるなら・・それ相応の覚悟をしろ」
「ちょっと意味がわからないんだけど・・・」
「濁すな。これだから女は信用できない」
と吐き捨てる様に言われた。
_何だろう?もとから女が嫌いって事?
初対面から冷たくされたのはそういう理由なのだろうか。
とセンジュは首を傾げる。
「ねえ、フォルノスは・・パパの為に・・」
言いかけて止めた。
虚しさが胸を通過した。
「なんでもない・・」
「・・・」
_止めよう。ここで話す事じゃないし。こんなに辛そうなのに。
俯くと、フォルノスは自分の体を無理やりに起こした。
腕に力が入らずに崩れそうになった。
「・・っ」
「ちょ、何やって・・」
抱きとめるとフォルノスはセンジュの顔を自分の胸に寄せた。
「黙れ」
ドキン
「少し・・このままでいろ」
ドキン
「な・・なんなの・・」
ドキン
「いいから・・そのままで・・聞け」
フォルノスの体が毒で震えている。
それはすぐにセンジュにも伝わった。
「俺の体は・・あの方の為にある」
「・・うん?」
「・・あの方が望むなら・・お前を手に入れる」
「それってパパが望んでるの?」
「さぁ・・今回ばかりはあの方の考えが読めていない。俺だけにすればいいものを・・他の3人も巻き込んでいるからな」
_本当にパパ一筋なんだな、この人。なんでも知ってそう。
「フォルノスには自分の感情がないの?私の事、好きじゃないでしょ?なのに私を?」
「・・ああ」
「ふ・・ふふ・・正直すぎるね」
思わず笑ってしまった。
「好きじゃない人をパートナーにしちゃ駄目だよ」
「・・では・・」
フォルノスの眼が鋭くなった。
センジュの体を精一杯に自分に寄せ、抱きしめた。
体が弱っているというのにきつく抱きしめる。
「ちょ、苦し・・」
「教えろ・・お前を」
フォルノスの唇がセンジュの唇をかすめ、頬に滑った。
「や・・ちょっとっ!」
「っ・・」
思わず跳ねのけようとしたが、病人だという事を思い出した。
支えながらベッドに押し付けた。
「寝てて!」
「・・・」
無理に限界が来たのか、フォルノスは黙って目を閉じた。
「馬鹿・・・先生呼んでくるからっ!」
そう言ってセンジュは駆けていった。
目を閉じ、真っ暗な闇の中でフォルノスは笑った。
「・・馬鹿・・か。確かに馬鹿な真似だな」
______________________________________
冗談まじりでそう思いたかった。
目の前で誰かが苦しんでいる。
昨日もリディやアルヴァンの妻が亡くなってしまうところを見ている。
息が出来なくなるほど悲しくなった。
「死なないでよ・・私に色々教えてくれるんでしょ?」
とフォルノスの右手に触れた。
指をそっと触る。男らしくも綺麗な指をしている。
「はぁ・・」
苦し気にフォルノスは大きな息を吐いた。
「・・・お前・・か」
「フォルノス・・起きたの?」
「何故・・ここに」
今にも泣きだしそうになってしまった。
「フォルノスが訓練所に来ないから・・」
「ああ。そうか・・・」
ゆっくりとフォルノスは目を開け、泣きそうなセンジュの頬に指で触れた。
「弱虫が・・」
「そんなこと・・言ったって・・勝手に出てくるんだもん」
「まったく、魔王の娘ともあろう者が・・」
そう言ってフォルノスはまた目を閉じた。
痛みと悪寒に震えている。
_よかった。話が出来るって事は回復してるって事だよね?
「先生を呼んでこようか?」
「いや、いい・・平気だ」
「そんなに顔が青いのに・・」
「余計な真似をするな・・」
フォルノスはセンジュの指を力なく握った。触れる程度だ。
ドキン
「折角だ。看病でもしてもらおうか」
「え・・えっと・・」
「嫌そうだな」
「そんな事_」
脳裏に何故か昨日の事がよぎってしまった。
_な、なんで思い出すの、こんな時に・・。
「冗談だ。お前が俺の事を嫌いなのは知っている。無駄な情けをかけるな」
「え・・」
「かけるなら・・それ相応の覚悟をしろ」
「ちょっと意味がわからないんだけど・・・」
「濁すな。これだから女は信用できない」
と吐き捨てる様に言われた。
_何だろう?もとから女が嫌いって事?
初対面から冷たくされたのはそういう理由なのだろうか。
とセンジュは首を傾げる。
「ねえ、フォルノスは・・パパの為に・・」
言いかけて止めた。
虚しさが胸を通過した。
「なんでもない・・」
「・・・」
_止めよう。ここで話す事じゃないし。こんなに辛そうなのに。
俯くと、フォルノスは自分の体を無理やりに起こした。
腕に力が入らずに崩れそうになった。
「・・っ」
「ちょ、何やって・・」
抱きとめるとフォルノスはセンジュの顔を自分の胸に寄せた。
「黙れ」
ドキン
「少し・・このままでいろ」
ドキン
「な・・なんなの・・」
ドキン
「いいから・・そのままで・・聞け」
フォルノスの体が毒で震えている。
それはすぐにセンジュにも伝わった。
「俺の体は・・あの方の為にある」
「・・うん?」
「・・あの方が望むなら・・お前を手に入れる」
「それってパパが望んでるの?」
「さぁ・・今回ばかりはあの方の考えが読めていない。俺だけにすればいいものを・・他の3人も巻き込んでいるからな」
_本当にパパ一筋なんだな、この人。なんでも知ってそう。
「フォルノスには自分の感情がないの?私の事、好きじゃないでしょ?なのに私を?」
「・・ああ」
「ふ・・ふふ・・正直すぎるね」
思わず笑ってしまった。
「好きじゃない人をパートナーにしちゃ駄目だよ」
「・・では・・」
フォルノスの眼が鋭くなった。
センジュの体を精一杯に自分に寄せ、抱きしめた。
体が弱っているというのにきつく抱きしめる。
「ちょ、苦し・・」
「教えろ・・お前を」
フォルノスの唇がセンジュの唇をかすめ、頬に滑った。
「や・・ちょっとっ!」
「っ・・」
思わず跳ねのけようとしたが、病人だという事を思い出した。
支えながらベッドに押し付けた。
「寝てて!」
「・・・」
無理に限界が来たのか、フォルノスは黙って目を閉じた。
「馬鹿・・・先生呼んでくるからっ!」
そう言ってセンジュは駆けていった。
目を閉じ、真っ暗な闇の中でフォルノスは笑った。
「・・馬鹿・・か。確かに馬鹿な真似だな」
______________________________________