魔界の華は夜に咲く
バルコニーからセンジュの部屋に入り、フォルノスを急いでベッドに横にさせた。
「大丈夫?」
「ああ、さっきより楽になった」
それを聞き安心した。
「良かった。あ、水飲む?」
水の瓶を持つとほとんど入ってない事に気づいた。
「あ、そうだった。水こぼしちゃったんだ」
センジュが瓶を眺めているとフォルノスはおもむろにベッドから起き上がった。
「・・行かなくては」
「え!?駄目だよまだ」
センジュがあまりに驚くので、フォルノスは意外だった様だ。目を丸くさせている。しかし仕事が優先だ。
「まだ終わってない。あの者に尋問しなくては」
「そうかもしれないけど・・そんな身体で・・」
まだまだ顔が青いのだ。本当に良くなるのかセンジュは心配だった。
心配そうに見つめてくるセンジュを、フォルノスは感心した。
「強くなったな」
「え?」
「来た頃は怯えてばかりだったのに。俺に指図するようになった」
「指図じゃなくて心配だよ!フォルノスは強がりだから体調が良くなくても無理しそうだし」
「・・・」
図星の様だ。無言になった。
「どうしてそんな考えでいるの?誰かを頼ればいいのに」
不愛想な顔でフォルノスはぼそりと言った。
「俺は幼い頃から1人だった。スラムで運良くベリオルロス様に拾われてここまで生きてきた。誰かを信用した事など一度もない」
「一度もって・・ていうか、あの街が故郷なの?」
「意外といった顔だな」
「全然そんな感じしないから」
「生まれた場所なだけだ」
そんな事よりもこの状況の方が意外だった。
フォルノスの性格上、自分の事をさらけ出すなんて思いもよらない事だ。
自分に少し心を開いてくれたのだと思って嬉しくなった。
「俺の命はあの方の為にある。・・だから俺はあの方の為だったらなんでも出来る」
「そっか・・そうだったんだ」
「だが、その為には・・生き残らなくては」
何度も命を狙われ防衛本能がより強くなっていったのだった。
だから誰も信じないと決めたのだった。
「今回の件は流石にあの方もご立腹になるだろう。天使が絡んでいるとなると・・」
「そう・・なの?」
「ああ。我らの天敵だからな。最悪の場合、争いが始まる」
「そんな・・」
「何故お前を狙ったのか。尋問する事は大いにある。だから俺が直々に行かなくてはならない」
「ぁ・・」
行こうとした瞬間、思わずセンジュは止めた。自分でも無意識にフォルノスの腕を掴んでいた。
フォルノスは首を傾げている。
「・・どうした?」
「え・・あ!な、なんでも・・」
_ひええっ!?私何してるの!?思わず掴んじゃった!でもなんか、まだ行って欲しくない。
しどろもどろになりながらセンジュは顔を真っ赤に染めた。
「お前、熱でもあるのか?顔が・・」
「な、ない!違う!じゃなくて・・そのっ・・ええと・・」
言葉が出てこない。頭の中は真っ白だ。
フォルノスは理解出来ずにきょとんとしていたが、慌てふためくセンジュに笑いがこみ上げてきた。
「お前は本当に・・予想外なヤツだな」
_あ、また・・フォルノスが笑った。
フォルノスが笑うと心がぱっと開く。
じわじわと嬉しさがこみ上げてくる。
「普段からもっとそうやって笑えばいいのに」
「面白くもないのに笑えるか」
「そうだけどさ・・エレヴォスさんとかいつもニコニコしてるよ」
「あいつがおかしい。あれで何を考えているか悟られない様にしている」
「え・・そうなの?」
「策だろうな。あれは」
_そうなの!?私はずっとあの笑顔に癒されてきたよ!?
しかめながらエレヴォスの顔を思い出していると、フォルノスの手がセンジュの頬に触れた。
「俺もアイツの様に笑っていたら、少しは周りの反応が違うのか」
「え!?フォルノスが!?アハハ・・それいいね!皆驚くよ」
屈託のない笑顔でセンジュは笑った。センジュもフォルノスに対し少し心を許し始めた。
命を張って何度も守ってくれるフォルノスを信頼し始めているのだ。
「コロコロとよく笑う・・うっとおしいヤツだな」
「え?ひど・・・っ」
憎まれ口を言いながらも、フォルノスの声は少し穏やかに聞こえた。
「ふ・・ぁ・・」
ちゅっ。
センジュを黙らせるようにフォルノスの唇が触れた。
「お前にだけでいい」
ドキン
「・・え」
「笑うのは・・」
目と目が、鼻と鼻がくっつきそうなほどの至近距離でフォルノスは小さく言った。
「お前なら・・俺は_」
ドクドクとセンジュの心臓が高鳴った。
_フォルノスが・・また別人みたい。それにまた体がビリビリして動けなくなる。
どうしてなんだろう。
指と指が絡まり、じんわり熱を帯びている。
肩と肩が少し触れただけでセンジュの心がキュッと掴まれた様に苦しくなった。
_他の人と、何かが違う・・この人だけ。
同じキスでも、何かが違う。
センジュには理解出来なかった。
体が勝手に反応するのだ。
緊張して固く目をつむった。
_駄目・・また体がおかしくなっちゃう。
カタカタと震える肩を見つけ、フォルノスはゆっくりと離れた。
まるで察した様に。
「こんな事してる場合じゃないな」
という言葉に我に返った。
「お前も来るか」
「え?」
「それとももうこのまま休むか?」
「行く!行くよ!フォルノスまだ治ってないのに私だけ眠れないよ」
「そこは気にする必要はない」
「気にする!」
フォルノスが立ちあがると、センジュはそれを支える様に立った。
「私も知りたい・・天使の事」
「・・いいだろう」
「大丈夫?」
「ああ、さっきより楽になった」
それを聞き安心した。
「良かった。あ、水飲む?」
水の瓶を持つとほとんど入ってない事に気づいた。
「あ、そうだった。水こぼしちゃったんだ」
センジュが瓶を眺めているとフォルノスはおもむろにベッドから起き上がった。
「・・行かなくては」
「え!?駄目だよまだ」
センジュがあまりに驚くので、フォルノスは意外だった様だ。目を丸くさせている。しかし仕事が優先だ。
「まだ終わってない。あの者に尋問しなくては」
「そうかもしれないけど・・そんな身体で・・」
まだまだ顔が青いのだ。本当に良くなるのかセンジュは心配だった。
心配そうに見つめてくるセンジュを、フォルノスは感心した。
「強くなったな」
「え?」
「来た頃は怯えてばかりだったのに。俺に指図するようになった」
「指図じゃなくて心配だよ!フォルノスは強がりだから体調が良くなくても無理しそうだし」
「・・・」
図星の様だ。無言になった。
「どうしてそんな考えでいるの?誰かを頼ればいいのに」
不愛想な顔でフォルノスはぼそりと言った。
「俺は幼い頃から1人だった。スラムで運良くベリオルロス様に拾われてここまで生きてきた。誰かを信用した事など一度もない」
「一度もって・・ていうか、あの街が故郷なの?」
「意外といった顔だな」
「全然そんな感じしないから」
「生まれた場所なだけだ」
そんな事よりもこの状況の方が意外だった。
フォルノスの性格上、自分の事をさらけ出すなんて思いもよらない事だ。
自分に少し心を開いてくれたのだと思って嬉しくなった。
「俺の命はあの方の為にある。・・だから俺はあの方の為だったらなんでも出来る」
「そっか・・そうだったんだ」
「だが、その為には・・生き残らなくては」
何度も命を狙われ防衛本能がより強くなっていったのだった。
だから誰も信じないと決めたのだった。
「今回の件は流石にあの方もご立腹になるだろう。天使が絡んでいるとなると・・」
「そう・・なの?」
「ああ。我らの天敵だからな。最悪の場合、争いが始まる」
「そんな・・」
「何故お前を狙ったのか。尋問する事は大いにある。だから俺が直々に行かなくてはならない」
「ぁ・・」
行こうとした瞬間、思わずセンジュは止めた。自分でも無意識にフォルノスの腕を掴んでいた。
フォルノスは首を傾げている。
「・・どうした?」
「え・・あ!な、なんでも・・」
_ひええっ!?私何してるの!?思わず掴んじゃった!でもなんか、まだ行って欲しくない。
しどろもどろになりながらセンジュは顔を真っ赤に染めた。
「お前、熱でもあるのか?顔が・・」
「な、ない!違う!じゃなくて・・そのっ・・ええと・・」
言葉が出てこない。頭の中は真っ白だ。
フォルノスは理解出来ずにきょとんとしていたが、慌てふためくセンジュに笑いがこみ上げてきた。
「お前は本当に・・予想外なヤツだな」
_あ、また・・フォルノスが笑った。
フォルノスが笑うと心がぱっと開く。
じわじわと嬉しさがこみ上げてくる。
「普段からもっとそうやって笑えばいいのに」
「面白くもないのに笑えるか」
「そうだけどさ・・エレヴォスさんとかいつもニコニコしてるよ」
「あいつがおかしい。あれで何を考えているか悟られない様にしている」
「え・・そうなの?」
「策だろうな。あれは」
_そうなの!?私はずっとあの笑顔に癒されてきたよ!?
しかめながらエレヴォスの顔を思い出していると、フォルノスの手がセンジュの頬に触れた。
「俺もアイツの様に笑っていたら、少しは周りの反応が違うのか」
「え!?フォルノスが!?アハハ・・それいいね!皆驚くよ」
屈託のない笑顔でセンジュは笑った。センジュもフォルノスに対し少し心を許し始めた。
命を張って何度も守ってくれるフォルノスを信頼し始めているのだ。
「コロコロとよく笑う・・うっとおしいヤツだな」
「え?ひど・・・っ」
憎まれ口を言いながらも、フォルノスの声は少し穏やかに聞こえた。
「ふ・・ぁ・・」
ちゅっ。
センジュを黙らせるようにフォルノスの唇が触れた。
「お前にだけでいい」
ドキン
「・・え」
「笑うのは・・」
目と目が、鼻と鼻がくっつきそうなほどの至近距離でフォルノスは小さく言った。
「お前なら・・俺は_」
ドクドクとセンジュの心臓が高鳴った。
_フォルノスが・・また別人みたい。それにまた体がビリビリして動けなくなる。
どうしてなんだろう。
指と指が絡まり、じんわり熱を帯びている。
肩と肩が少し触れただけでセンジュの心がキュッと掴まれた様に苦しくなった。
_他の人と、何かが違う・・この人だけ。
同じキスでも、何かが違う。
センジュには理解出来なかった。
体が勝手に反応するのだ。
緊張して固く目をつむった。
_駄目・・また体がおかしくなっちゃう。
カタカタと震える肩を見つけ、フォルノスはゆっくりと離れた。
まるで察した様に。
「こんな事してる場合じゃないな」
という言葉に我に返った。
「お前も来るか」
「え?」
「それとももうこのまま休むか?」
「行く!行くよ!フォルノスまだ治ってないのに私だけ眠れないよ」
「そこは気にする必要はない」
「気にする!」
フォルノスが立ちあがると、センジュはそれを支える様に立った。
「私も知りたい・・天使の事」
「・・いいだろう」