魔界の華は夜に咲く
魔王はフォルノスにセンジュを託すと先に自分の部屋に帰っていった。

何か考え事をしている様だった。


「パパ・・大丈夫かな?戦争するって言いださないかな」


不安げに歩くセンジュの肩をフォルノスは抱いた。


「正直、可能性は大いにある」

「え!?」

「大天使ウリエルが動いている。あの方はそれを許しはしないだろう」

「そのウリエルっていう人はどんな人なの?」

「炎の様な天使だ。あの天使が通った道は業火で焼け野原になる」

「普通に・・怖いね」


_戦争なんて絶対に嫌だ。誰かが危険な目に遭うって事だし、無傷な訳がない。嫌だな・・どうして争いって起きるんだろう。


「可能性があるというだけだ、考えすぎるな」

「うん・・」


喋りながら歩いているとあっという間に部屋にたどり着いた。

ドアの前でフォルノスは冷静に言った。


「さきほどあの方が言った通り、お前は何もするな。囮になりかねん」

「・・わかってる。力も何もないし、そこは安心して」


センジュは素直に頷いた。


「俺もあの方と共に天界を探る事になるだろう」

「え?そうなの?」

「敵の動きがまだ読めない以上、先手を打つ必要がある。恐らく明日の会議でそうなるだろうな」

「・・そっか」


一気に不安が押し寄せた。

父や四大魔将が自ら危険な行為を買って出るというのだ。

不安意外にない。



俯いていると、フォルノスはその顔を無理やり上げた。


「考えすぎるなと言った」

「う・・だって」

「違う事を考えさせてやろうか」

「へ?何?」


ちゅっ。

「んっ・・・」

唇を塞がれた。

抵抗しようとしたが、壁に手を抑えられてびくともしない。


「なに・・す・・っ」

「お前は相手を選ぶことを考えていればいい」

「な・・」

「誰の唇が一番相性がいいか、考えながら眠るんだな」


ちゅっ。

吸い付く唇を離され、力が抜けた体をフォルノスは抱きとめた。

部屋のドアを開け、センジュをソファーに放り込んだ。

「ちょっ!フォルノス!!馬鹿!」


「いいから寝ろ。これ以上共に過ごすと、歯止めが利かんぞ」


ドキンッ!


そう言われ慌ててベッドへ潜った。


_馬鹿!馬鹿フォルノス・・何それ・・馬鹿。
心臓が鳴りやまないんですけど!!



モグラの様に布団をかぶっているセンジュの様子を確認すると、フォルノスは自分の執務室へと戻って行った。
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