魔界の華は夜に咲く
湯船を目の前にしたセンジュはほっと安堵のため息をついた。

漫画で見た様な血の池などでなく、いたって普通の湯船だった。少し薬草の様な香りがする。
温泉だろうか。

肩までしっかりと浸かり、目を閉じる。


「久しぶりの湯船・・気持ちいい」


3日前、母の事故を聞いてからずっと母につきっきりだった。

母は病院に運び込まれた時にはすでにこの世を去っていた。

交通事故により即死だと聞かされていた。

ショックで時が止まった状態だったセンジュに変わり、警察官が親戚に連絡をして親戚たちが葬儀など手配をしてくれたのだった。


「ママ・・・」


『センジュ・・・』


バシャッ


「ママ!?」


強く願った瞬間、母の声が聞こえた気がした。

立ち上がり振り向くと、リアがすぐに駆け付けた。


「センジュ様、いかがされましたか?」


「あ・・いえ・・ごめんなさい。なんでもない・・です」


_ママの声が聞こえた気がしたけど・・・気のせい・・だよね?



「あの・・もう出ます」


「かしこまりました」


センジュがそう言うと、リアはバスタオルで体を包んだ。


_ママ・・会いたいよ。
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