魔界の華は夜に咲く
魔界に着くと、階段付近で守りを固めているアルヴァンを見つけた。

近くには倒れている魔族と天使の亡骸が見えた。

「フォルノス!センジュ!」

「アルヴァンさん!これは・・」

ようやく安堵した様にアルヴァンは息を吐いた。

「お前が攫われた後に残った天使共と交戦していたんだ」


_そっか・・フォルノスが言ってた。アルヴァンさんが背後を護ってくれてるって。アルヴァンさんも傷だらけになってる。・・私のせいで。


「ごめんなさい・・攫われてごめんなさい」


アルヴァンに深く頭を下げて謝った。


「いや、俺達こそ・・不甲斐ない所を見せてすまなかった。フォルノスが来なければお前は天界に連れて行かれただろう」

「・・・・」


ドクン

その言葉に恐怖で言葉を失った。

これから起こるであろう出来事に、一気に不安に飲みこまれた。

フォルノスは先を歩き出した。アルヴァンはそれを追う。


「ウリエルは?」

「深手を負わせている。追っては来ないだろう、今の所はな。だが・・」

「だが・・なんだ?センジュ、大丈夫か?」


アルヴァンは震えるセンジュを心配そうに見つめた。その様子から何かがあったとアルヴァンは悟る。

しかしフォルノスはいつも通りの表情でスタスタと歩いている。

考えは読めない。


「ベリオルロス様の元へ向かう。そこで話す」

「ああ。ほら、センジュ。おいで」


アルヴァンに手を引かれたセンジュの目には涙が溜まっていた。

この大きな手も、いつかは自分を殺そうとしてくる可能性もある。

大好きな皆と離れる事になるかもしれない。

そんな事をセンジュはずっと思いつめ涙を浮かべていたのだった。

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