魔界の華は夜に咲く
城に戻ると魔王の部屋の前で待機しているエレヴォスを見つけた。
センジュを見つけたエレヴォスもホッと息を零した。安心した様子だ。
「センジュ!ああ、良かった・・ご無事でしたか」
「エレヴォスさん・・すみませんでした」
「いいえ、私こそ・・これからはもっと精進せねば。あなたを護る事など出来なかった・・相手は大天使とは言え・・不甲斐ない」
_全部私のせいなのに皆自分を責めている。ごめんなさい・・皆。
「あの方はどうしてる」
「ええ、今はだいぶ回復しています。先ほどお目覚めになったようです」
ドキン
ドキン
急に緊張で手が汗ばんできた。
それを横目で確認したフォルノスはセンジュの肩を抱いた。
恐怖で目がくらむ。
「落ち着け」
「う、うん・・」
フォルノスがノックをすると、中から魔王の声が聞こえてきた。
「ベリオルロス様、センジュをお連れしました」
「入れ」
「御意」
4人は静かに中へと入った。
魔王の寝室だ。
黒と紫を基調とした部屋だ。
「失礼いたします」
「うん」
魔王は静かにうなずき、ベッドから起き上がった。
「センジュ・・おいで」
ドキン
「パパ・・」
父の姿は少しやつれている様に見えた。
緊張で足が震える。
自分はどうなってしまうのだろうという恐怖が何度も頭をよぎる。
魔王に近づくと、魔王はセンジュの頭をよしよしといつも通りに撫でた。
「エレヴォスに聞いたよ。ウリエルに攫われたんだってね」
「・・うん・・」
「無事で良かった」
ニコリ。
というその笑顔がすでに恐怖だった。
フォルノス、アルヴァン、エレヴォスはセンジュの後ろで跪きながら話を聞いた。
「ウリエルに何か言われたかい」
「・・・・う、うん」
_どうしよう、怖い・・どうしよう・・。
「なんて?」
「・・・・」
口が強張ってすぐに答えられなかった。
「センジュ・・?」
その代わりに沢山の涙の粒が頬を伝った。
「ママ・・・」
「うん?」
「ママは天使だったって。ウリエルの妹だったって・・」
ボロボロと零れる涙を、魔王はぬぐってはくれなかった。
その代わりに深いため息を零した。残念そうに俯く。
「そうか・・」
ドクン
魔王の声が低くなったのを、センジュは聞き逃さなかった。
そしてエレヴォスやアルヴァンはセンジュの言葉に驚きを隠せなかった。
何かが始まる合図だと感じた。
心臓の音が煩いくらいに鳴っている。
2人は固唾を飲んで見守った。
だが次の言葉に驚いたのはフォルノスだった。魔王の性格をよく知っているからこそだ。
「それで、センジュはどう思ったの?」
「え・・?」
「アンジュが天使だったから、パパの事は嫌いになった?ウリエルに味方する?」
それにはセンジュは首を大きく横へ振った。
「そっか、ならいいじゃないか。センジュはパパの子でもあるんだから」
「・・パパ?」
「ママが居ない今、センジュを護れるのはパパと四大魔将だけだよ。今まで通りでいいじゃないか」
「でもパパは・・」
恐ろしくて聞けなかった。
_ママを殺したって、本当?
そんな事を聞いたら豹変してしまうかもしれない。
今まで通りで居させてくれるならそれがいいと、本能が恐怖を回避した。
「パパは・・私が天使の血を継いでいても怒らないの?」
「どうしてだい?センジュは何も悪くないじゃないか」
と魔王は優しくセンジュの頭を撫でた。
「だって・・天使は・・敵なんじゃ・・」
「んーー・・まあ、思うところはあるけど。でも、それはセンジュのせいじゃないし。むしろママに魅了されたパパのせいでしょ」
それを聞きセンジュは目を見開いた。
それを聞いていたフォルノスもだ。
そんな答えが返ってくる確率はきっと低かったに違いない。
殺される可能性の方が高いと思っていたのだ。
センジュは魔王の言葉に嬉しさが一気にこみ上げてきた。
安心感が生まれた。
「パパ・・」
「うんうん、でもウリエルは許せないな。センジュの叔父さん
て事になるだろうけど・・きっとセンジュを苦しめる事を言ったんでしょ」
「・・・」
「センジュが余りにも可哀そうだ。それだけは、許せない・・いいねセンジュ」
ぎゅっと強く抱きしめられた。
「辛かったね。パパに嫌われると思ったんだね」
「う・・うん・・」
労いの言葉にまた涙が溢れた。
センジュは魔王の胸に顔を埋めた。温もりを感じたかった。
「パパは天使によって今弱らせられている。被害者はパパだよ」
「・・うん」
「だから、ウリエルを倒す事を認めてくれるね?」
「・・・」
もう争って欲しくないというのが一番の願いだが、センジュは静かに頷いた。
センジュの答えに満足そうに微笑んだ魔王は上機嫌になった。
「よし、じゃあもう行っていいよ。ゆっくり休みなさい。お前達もご苦労様。センジュを護ってくれて感謝するよ」
「もったいなきお言葉を・・」
「これからも姫君を御守り致します」
「・・・では、失礼いたします」
魔王が手を離すと、受け取る様にフォルノスがセンジュに手を差し伸べた。
センジュも自然とその手を取った。
「パパ、ゆっくり休んでね」
「ありがとうセンジュ」
センジュを見つけたエレヴォスもホッと息を零した。安心した様子だ。
「センジュ!ああ、良かった・・ご無事でしたか」
「エレヴォスさん・・すみませんでした」
「いいえ、私こそ・・これからはもっと精進せねば。あなたを護る事など出来なかった・・相手は大天使とは言え・・不甲斐ない」
_全部私のせいなのに皆自分を責めている。ごめんなさい・・皆。
「あの方はどうしてる」
「ええ、今はだいぶ回復しています。先ほどお目覚めになったようです」
ドキン
ドキン
急に緊張で手が汗ばんできた。
それを横目で確認したフォルノスはセンジュの肩を抱いた。
恐怖で目がくらむ。
「落ち着け」
「う、うん・・」
フォルノスがノックをすると、中から魔王の声が聞こえてきた。
「ベリオルロス様、センジュをお連れしました」
「入れ」
「御意」
4人は静かに中へと入った。
魔王の寝室だ。
黒と紫を基調とした部屋だ。
「失礼いたします」
「うん」
魔王は静かにうなずき、ベッドから起き上がった。
「センジュ・・おいで」
ドキン
「パパ・・」
父の姿は少しやつれている様に見えた。
緊張で足が震える。
自分はどうなってしまうのだろうという恐怖が何度も頭をよぎる。
魔王に近づくと、魔王はセンジュの頭をよしよしといつも通りに撫でた。
「エレヴォスに聞いたよ。ウリエルに攫われたんだってね」
「・・うん・・」
「無事で良かった」
ニコリ。
というその笑顔がすでに恐怖だった。
フォルノス、アルヴァン、エレヴォスはセンジュの後ろで跪きながら話を聞いた。
「ウリエルに何か言われたかい」
「・・・・う、うん」
_どうしよう、怖い・・どうしよう・・。
「なんて?」
「・・・・」
口が強張ってすぐに答えられなかった。
「センジュ・・?」
その代わりに沢山の涙の粒が頬を伝った。
「ママ・・・」
「うん?」
「ママは天使だったって。ウリエルの妹だったって・・」
ボロボロと零れる涙を、魔王はぬぐってはくれなかった。
その代わりに深いため息を零した。残念そうに俯く。
「そうか・・」
ドクン
魔王の声が低くなったのを、センジュは聞き逃さなかった。
そしてエレヴォスやアルヴァンはセンジュの言葉に驚きを隠せなかった。
何かが始まる合図だと感じた。
心臓の音が煩いくらいに鳴っている。
2人は固唾を飲んで見守った。
だが次の言葉に驚いたのはフォルノスだった。魔王の性格をよく知っているからこそだ。
「それで、センジュはどう思ったの?」
「え・・?」
「アンジュが天使だったから、パパの事は嫌いになった?ウリエルに味方する?」
それにはセンジュは首を大きく横へ振った。
「そっか、ならいいじゃないか。センジュはパパの子でもあるんだから」
「・・パパ?」
「ママが居ない今、センジュを護れるのはパパと四大魔将だけだよ。今まで通りでいいじゃないか」
「でもパパは・・」
恐ろしくて聞けなかった。
_ママを殺したって、本当?
そんな事を聞いたら豹変してしまうかもしれない。
今まで通りで居させてくれるならそれがいいと、本能が恐怖を回避した。
「パパは・・私が天使の血を継いでいても怒らないの?」
「どうしてだい?センジュは何も悪くないじゃないか」
と魔王は優しくセンジュの頭を撫でた。
「だって・・天使は・・敵なんじゃ・・」
「んーー・・まあ、思うところはあるけど。でも、それはセンジュのせいじゃないし。むしろママに魅了されたパパのせいでしょ」
それを聞きセンジュは目を見開いた。
それを聞いていたフォルノスもだ。
そんな答えが返ってくる確率はきっと低かったに違いない。
殺される可能性の方が高いと思っていたのだ。
センジュは魔王の言葉に嬉しさが一気にこみ上げてきた。
安心感が生まれた。
「パパ・・」
「うんうん、でもウリエルは許せないな。センジュの叔父さん
て事になるだろうけど・・きっとセンジュを苦しめる事を言ったんでしょ」
「・・・」
「センジュが余りにも可哀そうだ。それだけは、許せない・・いいねセンジュ」
ぎゅっと強く抱きしめられた。
「辛かったね。パパに嫌われると思ったんだね」
「う・・うん・・」
労いの言葉にまた涙が溢れた。
センジュは魔王の胸に顔を埋めた。温もりを感じたかった。
「パパは天使によって今弱らせられている。被害者はパパだよ」
「・・うん」
「だから、ウリエルを倒す事を認めてくれるね?」
「・・・」
もう争って欲しくないというのが一番の願いだが、センジュは静かに頷いた。
センジュの答えに満足そうに微笑んだ魔王は上機嫌になった。
「よし、じゃあもう行っていいよ。ゆっくり休みなさい。お前達もご苦労様。センジュを護ってくれて感謝するよ」
「もったいなきお言葉を・・」
「これからも姫君を御守り致します」
「・・・では、失礼いたします」
魔王が手を離すと、受け取る様にフォルノスがセンジュに手を差し伸べた。
センジュも自然とその手を取った。
「パパ、ゆっくり休んでね」
「ありがとうセンジュ」