魔界の華は夜に咲く
4人は黙ったまま廊下を歩く。

少しほっとした様子のセンジュを、エレヴォスとアルヴァンは見つめている。

何か思うところがあるのだろう、とフォルノスは横目で監視していた。


「何処に行くの?」

「部屋まで送る」

「わかった」


3人に緊張が走っているのをセンジュはすぐにくみ取った。

やはり自分が天使のハーフであるという事が問題なのかもしれないと不安がよぎる。


部屋の前に着くと、フォルノスが2人に仕事を振った。


「アルヴァンはセンジュを頼む。エレヴォスはセヴィオの様子を見てくれ。執務室にいるから報告しろ」

「ええ、わかりました」

「・・わかった」


_フォルノス・・行っちゃうんだ。



ジッと見つめていると、フォルノスはセンジュに告げた。

それは警告だった。


「一安心・・と言いたいところだが」

「え・・?」

「正直、あのお方の心は誰にも読めない。さっきのは建前の可能性もある」


ズキン

その言葉に胸が痛んだ。


「お前は素直に受け取る癖がある。少しは疑うという術も身に着けた方がいい」

「・・・うん」

「それに、恐怖が勝ってしまったのは解らなくもないが・・確信は迫っていないだろう」


_だって、パパがママを殺したなんて・・聞けないよ。


「油断はするな誰に対しても。自分を護れるのは最終的には自分だ。・・いいな」

「・・はい」

頷くセンジュを見かね、アルヴァンがセンジュの肩を抱いた。


「フォルノス、不安を煽るな。休めるものも休めなくなるだろう」

「・・ふん。忠告は必要だ。素直になんでも頷いていたら、足元を救われ命を落とす。お前もセンジュを甘やかしすぎるなよ」

「余計なお世話だ。さっさと行け」

癇に障ったアルヴァンはセンジュを連れて部屋へと入っていった。

エレヴォスはその様子を黙って見ていただけだ。

しかしいつもの余裕の笑みを浮かべてはなかった。


「どうした?そんな顔はらしくないな」

「ええ・・まあ。謎は深まる一方ですしね」

「・・そうだな」

「それに・・あなたの事も」

「俺?」

「よくセンジュを助けましたね。あんなに毛嫌いしていたのに。・・それにお優しい事に忠告まで。あなたも足を救われない様にしてくださいね」

「そんな事、初めから解っている」

「ならいいのですが・・頼みましたよ」


エレヴォスはそのまま立ち去っていった。


_そんな事は、解っている。


フォルノスはエレヴォスが消えたのを確認すると、自分の執務室へと足を運んだのだった。

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