魔界の華は夜に咲く
「今、お前を1人にしたらそうやって思いつめる。塞ぎこむだろう」

「・・・」

「真面目な性格は嫌いじゃないが、息がつまるぞ」


アルヴァンはセンジュの手を取って隣に座らせた。


「悪いな・・俺も戦闘態勢が続いている。余裕がなかったな」

「・・仕方ないですよ・・私が隣にいたら」

「そういう意味じゃないんだがな。ハハ、お前・・相当病んでるな」

「え?」

アルヴァンはセンジュの肩を抱き、自分に引き寄せた。

「確かに、今後どうなるか解らないが・・お前はそのままでいいに決まってるだろう」

「え・・?」

「明日の事なんて誰にも分らないじゃないか?」

「それは・・そうですけど」

「もしかすると、敵になるかもしれないし、殺し合うかもしれない・・そんな不安ばかり妄想してたら人生を捨てる事になる。時間がもったいないだろう」

「は、はい・・」


状況が把握できてないセンジュは緊張して体を強張らせている。


「つまり、今を大事にしろ。明日の事なんてわからないんだから。解っていたらリディは死んでないだろ?」

「アルヴァンさん・・」


ぽろり・・と一粒涙が零れた。

_本当に?このままで居ていいの?


まだまだ不安ばかりが頭をよぎるが、そんなセンジュの頭をアルヴァンは抱き寄せた。


「はいはい。大丈夫大丈夫」

「う・・子供扱いですね」

「俺にとっちゃ今のお前は子供同然だな」


頭を撫でられる度、安心と共に涙が溢れる。


「いいんですか?」

「ん?」


涙目でジッとアルヴァンを見つめた。


「私・・ここに居ても・・アルヴァンさんと話しても」

「いいよ、どうした。いつにも増して情緒不安定だな」

「だって!だって私・・半分天使だったんですよ!嫌われたら生きて行けないんです!」


センジュは必死だ。

魔界の皆が好きなのだから。嫌われたくないのだから。


「でも半分魔族で、魔王の娘だろ。自信を持て」

「でも・・」

「あーー。面倒だな」

「んっ」

アルヴァンはセンジュの唇を奪った。

「煩い子には、こうやって黙らせないとな」

「・・・・」

思わず固まったセンジュだ。一気に顔が真っ赤に染まった。


「わかった?お前を嫌いじゃない。ここに居てもいい」

「は・・はい」


キス一つで黙らせられた。

落ち着かせられた。

説得力のある声に、センジュは頷いた。

ようやく認めてもらえた気がした。

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