魔界の華は夜に咲く
泣き出しそうになっているセンジュに、アルヴァンは確かめる様に言った。

「他の3人の誰かなんだろうけど。俺の事よりもっと好きだって事か?今そいつの事で頭がいっぱいって事か?ただただ嫉妬する話だな」

「だから違いますって」

「じゃあ、抱く。違うなら続行だ」

「え・・え!?」


アルヴァンの心も燃えていた。生まれた時から負けず嫌いだ。

「俺はお前を本気で欲しい。これは前にも言ったな」

「は・・はい」

「お前の愛が欲しい。全部欲しい。俺はお前の傍にいたい」


_私だって本当は愛されたい。ママとパパみたいになりたいって思ってた。私の恋は実らない。

私がフォルノスのことが好きでも。

アルヴァンさんみたいに真っ直ぐに想いを告げたとしても・・フォルノスはきっと受け入れてくれない。

それに・・・

「好きと愛する事は違うんでしょうか。・・恋をするって意味ない事なんでしょうか?」

「何故そう思うんだ?感情が豊かな事は良い事じゃないか。意味ない事なんてないだろ」

「でもそれじゃ何故パパは・・ママを殺したんですか」

「・・なに?」


流石にその話にはアルヴァンも真面目になった。


「なんだそれは・・どういう事だ?」

「さっきは怖くて聞けませんでした・・ウリエルが、ママを殺したのはパパだって言ってたんです」

「・・・そうだったか」

「あんなにママを好きって言ってるのに、殺しただなんて・・信じられないし。ホントはパパの事こんな風に疑いたくない」


落ち込むセンジュを、アルヴァンは包み込んだ。やれやれと諦めた。


「そうだな・・確かにそんな話を聞いたら、愛だの恋だの、信じられなくなるな」

「ごめんなさい・・アルヴァンさん・・また私・・」


「いいよ。そんな話聞いたら流石に萎える。仕方ないから、今は優しいお兄さんになってやるよ」


背中を撫でながらアルヴァンはジッと天井を見つめた。


_やれやれだ。センジュはなかなか手強いな。俺は本気なんだがな。

しかしそれにしてもな。今の話にはもっと根深い何かがあるだろう。あの方のあの素振り・・アンジュ様を天使だと知っていた様だった。

もしかすると、今世紀での大事件かも知れん。きっとまたウリエルもやって来るだろうし・・。


そんな考えを悟られない様にアルヴァンは陽気に言った。


「ホント、センジュは逃げるのが上手いなー」

「ぅ・・ごめんなさい」

「ハハ。だが俺だって諦めてないからな。この次は覚悟しろよ?」



_正直、次回があるかどうかもわからんがな。

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