魔界の華は夜に咲く
しとしと

空から涙が降り注ぐ。

今日は彼女にとって人生で初めての葬儀となった。

自分を一人で育ててくれた大切な母が他界したのだ。

交通事故だったと聞いていた。

仏壇にはもうすぐ消えてしまいそうなお線香と遺影。

彼女はずっとそこに1人でぽつりと座り込んでいる。

葬儀が終わってからずっとだ。


「・・・」


幾度となく頬に涙が伝う。拭う事も途中でやめた。

彼女の心はぽっかりと穴が開いてしまったかのように虚無だった。


_ママ・・・。


質素に行われた身内だけの葬儀。

親戚たちはとっくに帰った後だった。

彼女を残して。



『罰が当たったんだよ。ろくな行いをしていなかったじゃないか』

『いかがわしい仕事してたんだろう?身内と思われたくないよ』


遠縁のおじさんやおばさん達の言葉が彼女の頭を支配した。


_何も・・知らないくせに。



彼女の母は一人で彼女を育てる為に、夜の仕事をしていた。

凝り固まった概念しか持ち合わせていない遠縁の親戚たちは母を蔑んだ様な扱いを今までもしてきた。

そして死んでもなお、憐みの言葉すらかけて行かなかった。



_ママは・・何も悪くない。一生懸命だっただけ。


彼女は仏壇の前でごろんと横になった。

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