魔界の華は夜に咲く
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「ん・・・」


目を覚ましたセンジュの目の前に、長いまつ毛が見えた。

自分のベッドの上だ。隣にエレヴォスが眠っていた。

服が乱れてはだけた姿は爽やかな色気を醸し出している。

センジュの気配を感じ、エレヴォスはゆっくりと瞳を開いた。


「起きた?」

「エレヴォスさん・・」

「また"さん”がついてる」

「あ、ごめん・・なさい。私・・眠っちゃった・・の?」

「ええ」

エレヴォスはふんわりと微笑むとセンジュを引き寄せ、抱きしめた。

「疲れてしまった?体は平気?」


ドキン


「う、うん・・」


_なんだかエレヴォスさんじゃないみたい。喋り方が違うだけなのに。


「どうしたの?」

「なんだか・・慣れなくて」

「フフ・・私もだよ」


きゅっ。と抱かれ、センジュはエレヴォスの胸に顔を埋めた。


「どう?心は晴れた?」


ドキン


「えと・・」


エレヴォスは戸惑うセンジュの額に何度もキスの雨を降らせた。

愛しむ様に。


「私は今とても幸せだよ・・ありがとう」


センジュが見あげると顔をくしゃりとして笑っている。
とても満たされた顔でセンジュを見つめている。


「私がこれからもあなたを護ってあげるから。この命を懸けて、どんな事からも」

「そんな・・そんな事言わないでください」

「え?」

「私・・そんな人間じゃないんです・・・・私、エレヴォスさんを利用しただけなんです。心が苦しくて・・誰かにすがりたくて」

「センジュ・・」

「私は・・酷い人間です。ごめんなさい」


背を向け赤ん坊の様にうずくまった。自分のしたことに罪悪感を感じた。


_こんなに優しい人につけ込んで・・私・・最低だ。


センジュを背後から抱きしめエレヴォスは言った。


「それでいいよ」


「・・え?」


「私も同じ。センジュに近づきたくて・・こんな事をした。だから自分だけ責めないでいいよ。それに、もっとセンジュの事を教えて欲しい。もっと近づきたい」

「エレヴォスさん・・」

「こーら。また"さん”が付いてる」

「う・・ごめんなさい」

「フフ・・大丈夫・・ゆっくりでいいから・・」


震えるセンジュの背中をずっと撫で続けた。

優しく包み込むように。


_なんて可愛い人なんだろう。少し乱暴にしてしまえば、あっという間に壊れてしまう。

いつでもそれが出来てしまえるほど、純粋で・・美しい。

きっと母に似たのだろうね。

我が君が惚れてしまうのも頷ける。


「センジュ・・こっちを向いて」


耳元で優しい川のせせらぎの様な声がくすぐる。

センジュがゆっくりと振り返ると、エレヴォスは愛の籠った唇を贈った。

「私の・・センジュ」



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