魔界の華は夜に咲く
アルヴァンはセンジュの涙をごしごしと拭うと話を切り替えた。

「で?あの方はどうだった?天使は?」

「はい。パパは元気そうだったけど・・ラディエルは・・」


_大丈夫かな?痛めつけられてないといいけど。


「余計な心配はなしだ。お前は魔族としてこっちで暮らす事に決めたんだろ?」

「はい」

「だったらあの方に従うべきだ。天使の心配なぞしてたら、信用を失うぞ」

「信用・・はい」

「お前は魔王の娘だ。他の魔族に示しがつかなくなる」


アルヴァン達が一番心配している事だ。


「優柔不断は皆を混乱させるだけだ」


その言葉にセンジュは素直に頷いた。


「そうですよね・・」

「それだけは、はっきりさせておけ」

「はい」

「というか、お前が敵になるのはゴメンだからな」

「アルヴァンさん・・」


そう言ってアルヴァンはセンジュの頭を自分の肩に寄せた。


「今は心を休めろ。色々考えすぎて疲れたろ」


「ありがとうございます」


逞しい肩に頭を乗せると、アルヴァンはもう一度頭をポンと撫でてくれた。


_心地いい。アルヴァンさんて本当に頼もしいな・・。


疲れが一気に出たのか、急に眠気が襲って来た。


「すぅ・・・」


安らかに眠りについたセンジュを、アルヴァンは見つめた。


「ったく、無防備だな」


切なそうに笑うと、優しく唇を奪った。

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