魔界の華は夜に咲く
一方、魔王の元に向かったフォルノスだったが、セヴィオに呼び止められた。

城の中庭だ。

互いに睨み合いながら対峙した。

「なんだ珍しいな、お前が俺に用とは」

「あんたさ、ホントはどう思ってんの?」

「何がだ」

「センジュだよ」


センジュの名前を出してもフォルノスは眉をぴくりとも動かしはしない。


「あの話聞いて本当は何かしら思ってんだろ?スラムでは俺にマウント取ってきたわけだし」

「・・・」

「俺なんかさっき、エレヴォスに腹立ってキレそうになったし」

「それを知ってどうするつもりだ」

「どうもしねえよ。だけど、あんたの態度が気になる」


フォルノスはため息を零した。


「無駄な時間を使うな」

「俺はセンジュか来てからずっとあんたの事見てたけど、ちょっと変わってきたの自分で気づいてねえの?」

「・・・・なんだと?」


その話には眉をぐっとしかめた。


「いつもの自分を装ってるけど。多分、バレバレだぜ。エレヴォスにもアルヴァンにも」

「だったらなんだと言うんだ?人にかまってる暇があったら仕事をしろ」

「まあ、その通りなんだけど。どうしても確かめたくて」

「何をだ?」


セヴィオは手のひらに力を込めた。

青い炎が舞った。

フォルノスに対し、目がギラリと光った。

「これ以上センジュを追い詰めると・・マジで怒る。アイツを泣かせるな」

「・・・いつまで経ってもガキだな」

「ガキとか大人とか、関係ねえんだよ!あんたのせいでセンジュは・・苦しんでる」


ゴオオッと大きな音を立て、炎が朱色に変わった。

「くだらん。そうやって色恋に夢中になって死んでゆくんだろうな・・馬鹿な奴から」


フォルノスが背を向けると、セヴィオの炎が周りを囲んだ。


「それ言ったらおしまいだな。ベリオルロス様は天使だった女を本気で想ってたんだからな。あの方を侮辱してるのと同じだ」

「あの方にもお考えがあってこそだ。それがわからんのか」

「良い加減素直になれよこの野郎!」


セヴィオが炎を解き放とうとした瞬間だった。

ドッ!

フォルノスの氷柱が炎を掻い潜りセヴィオの腕や足に刺さった。


「ぐ・・・」

「滑稽だな。四大魔将とは名ばかりか。炎を使うくせに氷も溶かせん」

「あんたもだいぶ滑稽だよ。こんな俺にムキになって反撃するほど・・余裕がねえって事だ」

「・・・」


フォルノスは無言のまま手に力を込めた。

杭のような氷柱を作り、セヴィオの心臓にピタリと当てた。


「図星じゃねえか・・・?」

「黙れ、俺は弱者が嫌いなだけだ」


_弱者に成り下がる自分も。



氷柱を持つ手を振りかざした瞬間だった。

「何をしてるのですか!お止めなさい!」

エレヴォスが割って入った。セヴィオの体は血だらけだ。

「フォルノスなんて事を!」

「・・・」

「あの方の命に背く気ですか!センジュの事で争う程、馬鹿な話はありませんよ!!」


フォルノスは氷柱を握りしめて砕いた。


「俺を逆撫でして、タダで済むと思うなよ」


「るせえ・・あんたも後悔するなよ。自分のした事にな」


睨みを効かせながらフォルノスは消えていった。


「セヴィオ!あなたも何を考えているのですか?」

「別に・・ただ、はっきりさせたかっただけだ。何考えてるか」

「そんな事せずとも・・」


セヴィオはエレヴォスの手を借りずに立ち上がる。


「じゃあな」


「セヴィオ・・」


< 222 / 289 >

この作品をシェア

pagetop