魔界の華は夜に咲く
すっかり夜になり、センジュは目を覚ました。

アルヴァンの肩を借りうたた寝してたがアルヴァンがベッドへ寝かせてくれたのだった。


「あれ・・私、何時間寝ちゃったんだろ」


目を擦っていると、部屋にリアが入ってきた。


「お目覚めでございますか」

「はい。あの、アルヴァンさんは?」

「はい。エレヴォス様がいらっしゃいまして、席を外しております」

「エレヴォスさんと・・」


_け、喧嘩とかじゃないよね?


ビクビクしながらもベッドから起き上がった。


「なんでもセヴィオ様がまたお怪我をなさったそうで」

「え!?どうしてですか!?」

「それが・・フォルノス様と言い合いになったそうで・・」


それには流石にセンジュの顔つきも変わる。


「どうして・・」

「内容までは伺っておりませんが・・。この話は魔王様には内密にと」


_セヴィオはまだ傷が治ってないハズなのに・・。


「リアさん、私ちょっと行ってきます!」

「え!?どちらへ!?」

「セヴィオの所です」

「ですが・・」

「大丈夫です!城の何処かでアルヴァンさん達に会うかもしれないし」

「あ、いけません!センジュ様!おひとりでは!」


慌てるリアの言う事を聞かずセンジュは部屋から飛び出した。


_大体城の作りも解ってきたし、セヴィオはきっと医務室にいるからそこに行けばアルヴァンさんとエレヴォスさんにも会えるかもしれない!


センジュは廊下をパタパタと走る。

途中に待機している兵士がセンジュを見て驚いた様だが、センジュは手で来なくていいと合図した。

医務室を覗いたが、セヴィオの姿は見えなかった。


「あれぇ?・・いると思ったんだけどな」

「まあ、センジュ様・・いかがなさいました?」

医務室から看護師が現れた。


「セヴィオのお見舞いに来たんですけど」

「セヴィオ様なら、恐らくご自分の執務室にいらっしゃるかと」

「あ、そうなんですか!ありがとうございます!」


センジュは颯爽と駆け出した。


_ええと、執務室は上だっけ。


近くに螺旋階段を見つけた。


_外から行けば早いハズ。


非常階段とも受け取れる石垣で出来た螺旋階段を駆け上がる。


「うわ・・月が・・紅い。そういえば月をちゃんと見るの初めてかも」


外の景色は人間界とは異なっている。星は出ておらず三日月は紅く染まっていた。

先日攫われた時は月を見る余裕などなかったセンジュにとても新鮮だった。しかも1人だ。月を見ているとセヴィオの顔が浮かんだ。


_セヴィオ、大丈夫かな?そういえば機嫌悪かったし、行ったら迷惑かな・・。思わず心配で飛び出して来ちゃったけど・・。


後の事を全く考えてなかったセンジュである。

階段を駆け上がり、中へ入るといくつも部屋が見える。

四大魔将1人1人に用意された執務室と資料室などの扉が並んでいる。


_うわ・・何処だろう・・ちゃんと覚えておけば良かった。雰囲気で決めるしかないかな?他の誰かが居れば聞けるんだけど。


部屋には魔界の文字で名前が書かれていたがセンジュに解るハズもなかった。

見渡したが近くに誰もいない。

静まり返っている。


「うーん・・」


とぼとぼと歩いていたが、ある部屋の前でピタリと止まった。


_ここは覚えてる。フォルノスの執務室だ・・。


エレヴォスに教えてもらった時の事を思い出した。

中から聞こえてきた女性の声も。


_うう、嫌な事思い出しちゃった・・。早く行こう。


と止めた歩みを再開しようとした時だった。
< 223 / 289 >

この作品をシェア

pagetop