魔界の華は夜に咲く
宴もたけなわになり、センジュはアルヴァンとエレヴォスに連れられて自分の部屋へと帰された。

扉の前でふらふらとしながら立つセンジュをエレヴォスが支えている。


「センジュ、大丈夫ですか」


「顔が赤いな。瞬きも多い様だが」


ガトーショコラと共についてきた飲み物をワインと知らずに飲んでしまったのだ。


「だ、大丈夫です。ちょっとしか飲んでませんから」


_本当にちょっとだけなのに、あのお酒強すぎる。油断するとつまづきそう。世界が回って見える~。魔界のお酒って人間のとは違うのかなぁ。


体が浮くような感覚に襲われる。
眼がチカチカして真っ直ぐ見る事が出来ない。


「ベッドに横になってください。お水を用意します」

「すみません・・あっ」


体がゆらりと揺れ、足がもつれたタイミングでエレヴォスにもたれてしまった。


「おや。」

エレヴォスの胸に抱きとめられた。ふわりといい香りがする。


「ごめんなさい、すぐに・・」

「センジュ・・そんな可愛い姿を見たら我慢できなくなりますよ」


はむっ


「ひゃっ・・」


突然エレヴォスの唇がセンジュの首筋にぱくりと食いついた。


_何が起きてる?目が回っててわからないよ。くすぐったいっ


エレヴォスはそのままセンジュの耳もとで囁いた。


「早くあなたを手に入れたい」


「随分と抜け駆けが過ぎるな。俺の目の前で良く出来たな」


もちろん近くにいたアルヴァンは少し機嫌を損ねている。

エレヴォスは意地悪そうな目をしながら、これ見よがしにセンジュを背後から抱きしめ見せつける。

「おや、あなただってこんな顔を見たらかぶりつきたくなるでしょう?流石はあの方の姫君です。とても艶めかしい」


「ちょ・・ひゃっ」


センジュの頬をエレヴォスの指がひやりとなぞった。

酔いのせいか体が動かずセンジュは抵抗する事も出来なかった。


「は・・」


アルヴァンの口角が斜めにあがった。

センジュの芸術品の様な美しい表情に一瞬で見惚れたのだ。


「確かに妖艶だな・・晩餐会に現れた時から感心していたが」


びくんっ


センジュの体が跳ねた。

アルヴァンの太い指がセンジュの太ももをなぞったのだ。


「や、めっ・・」


細い肩を抱きとめながらエレヴォスはうなじに唇をなぞらせる。


「自分ではご存じないのでしょうね。あなたはとても魅力的です。我々を虜にする事が出来るほど」


「・・め・・っ」


_くすぐったい・・目がまわる・・何も考えられない・・いやだ・・



「あっ・・何?・・んっ・・ん」


前からアルヴァンの顔が近づき息が交差する。

艶めかしいリップノイズが部屋に響いた。

熱い唇が重なり、なぶるように舐めとられる。

ペロリと吸い付いた唇がようやく離れるとアルヴァンが言った。


「センジュ、この俺の感触を忘れるなよ」

濃厚な口づけにガクリと腰から落ちそうになったセンジュをアルヴァンが抱きとめた。


「ああ、これ以上は危険ですね、歯止めが利かなくなります。初めての晩餐会でお疲れの様ですし、今日は休ませてあげましょう」

「そうだな。初日から無理をさせるわけにはいかんしな」


センジュはそのまま2人に促され、ベッドへと降ろされた。


「おやすみ。我が姫、いい夢を」


「またな」



2人はセンジュの髪や顔を優しく撫でると部屋を後にした。



「な・・な・・な・・」


_何が起きてるの!?ついていけない・・私・・。


ぐるぐるぐる。と天井はまだ回っている。


熱を帯びたまま、センジュは酒の力によって深い夢の中へと誘われていった。


「目が・・まわる・・」


_これ、夢なのかな?そうだよね?きっと夢だ・・・夢でお願いしま・・・ス・・・。
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