魔界の華は夜に咲く
センジュはウリエルの住む屋敷へと通された。

真っ白で広いリビングに大きなソファー。金色で天使の羽を象った美しい彫刻が飾ってある。


_THE・天使の家って感じだ・・・。


魔界の屋敷はどちらかと言えば黒や紫や赤などが多い。

天界はすべてが明るい色を基調としている様だ。白や黄色が多い。


「座れ」

「は、はい」

緊張しつつ、センジュは深呼吸した。


_絶対にこの人のペースに持っていかれない様にしないと!


センジュはもともと流されやすい性格だ。

自分でコントロールしなければならない。

自分に対しての試練でもある。


「水でも飲むか?」

「要りません」

「はぁ・・どうせ魔族どもになんか言われてきたんだろうけど、そんなに力んでると持たないぞ」

「・・・・」


_バレバレだ。全てがバレバレだ・・悔しい。


「羽根・・生えたんだな」

「あ・・・はい」

「まだ生え途中か。かすかに桃色が入ってる・・アンジュと同じだな」

「ママと・・」


_そうなんだ・・ママと同じ羽根なんだ・・。


「それにしても無事で良かった。俺はあの時、お前が魔王に殺されると覚悟したんだ・・半分天使が入っていると知られたら」

「・・パパは、知ってましたよ」

「ん?」

「あなたはパパにママを殺されたって言ったけど・・確かに本当だったけど・・それはママの意思でもあるってパパは言ってた」


それを聞き、ウリエルは自分の両手をぐっと握りしめた。

魔王に対しての怒りを抑えている様だ。

「何が・・アンジュの意思だ・・アンジュを愛しているのなら・・殺せないハズだろ」

「2人で決めた事だって、言ってました・・私はそれを信じる事にしました」

「なんだと!?」


淡々と話すセンジュに、思わずウリエルは立ち上がった。


「お前は・・アンジュが死んで・・悲しくなかったのか!納得したというのか!?」


センジュはキュッと唇を噛み締めた。


「悲しくなかった・・わけない。私にはママだけだった・・学校で辛い事があっても、生活が苦しくても・・ママさえいれば幸せだった」

「そうだろう!?じゃあなんで魔王を許す!?なぜ納得できるんだ!!」


センジュも負けじと立ちあがった。

怒りがこみ上げてきた。


「パパは!本当にママを愛してます!絶対です!この目で見たパパの目は本気の目だった!」

「馬鹿な・・魔王を信じると・・お前の口からそんな言葉聞きたくなかった」

「だって、パパは大切にしてくれてる!私を・・いつも抱きしめてくれる!その温もりは本物だって、どうして信じちゃいけないの!?」

「演技だとしたらどうする!お前を利用する為に!」

「それはあなたも同じでしょ!?」

「!!!」


センジュは後ずさった。


「魔界に行けば、天使を信じるなって言われる・・天界に来たら、魔族を信じるなって言われる・・・」

「センジュ・・」

「じゃあ、なんで私は生まれたの!?魔族と天使の間から!!!」


センジュは訴えた。

怒りに任せて全てを解き放つ。


「私は・・ママにも・・パパにも・・苦しんで欲しくないだけなのに」

「・・・」


じわりと浮かんできた涙を、センジュは堪えた。


_私はパパを救いたいんだ!!

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