魔界の華は夜に咲く
懸命に走っていると、前に突如見知らぬ天使が立ちふさがった。


_ウリエルの仲間!?



天使はフードを被っている。顔は良く見えないが、恐らく自分を捕獲するだろうと思った。

センジュは横の草陰に飛び込んだ。


_絶対に帰る!絶対に・・魔界へ戻るんだ!!



「はぁっはぁっはぁ・・」


森がセンジュを護ってくれた。ウリエルの大きな羽根では木々の間は通れない。

ザッ


「!!」


ツルに絡まり転倒した。

足をひねらせ捻挫した様だった。


「う・・」


_早く逃げなきゃ!!皆に知らせなきゃ!!



ツルを引っ張った瞬間に、そのツルはまるで生きているかのようにセンジュに巻き付いた。


「え!?何!?いやっ」


足に絡まり、締め付けられた。


「嫌っ・・こんなの・・嫌だ・・ママ!パパ!誰かっ」


泣きながら叫ぶと、その体がふわりと浮いた。

誰かに抱き上げられたのだ。

「だ・・れ?」


目の前に現れたのはフードを被った天使だった。


「嫌だ!離してっ!」

「静かにしろ」


ドキン


_え?今・・知ってる声がした。



「え?え?なんで・・?」


ドクン


思わずそのフードを取ると、センジュは目を見開いた。


「・・フォルノス?」


目の前に現れたのはフォルノスだった。

しかし、男は否定した。


「フォルノス?人違いじゃないか?」

「え?何言ってるの?声だって・・顔も・・同じだし」

「知らんな」


男はセンジュを抱き上げたまま、空へと舞った。

確かにその男には天使の象徴とも言える羽根が生えている。

耳もとがってはいない。


「ねえ!魔界へ帰ろう!フォルノス」

「違うと言っているのがわからんのか。ったく・・イライラする」


_性格だってそのままだし!どうしてそんな事言うの!?


男はそのまま魔界へ繋がる階段とは反対方向へと飛んだ。


「え!?違う!あっちに行きたいのに!」

「黙れ」


センジュはそのまま連れて行かれてしまった。
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