魔界の華は夜に咲く
「目を閉じろ」
フォルノスと同じ声にセンジュは従った。
ラファエルはセンジュの髪をゆっくりと撫でた。
「・・・センジュ」
ドキン
耳元で囁かれたその声はフォルノスそのもの。
目を閉じ、視界を遮る事で更にフォルノスを感じた。
「センジュ・・」
ほろりほろりと温かな涙が頬を伝う。
センジュはラファエルを抱きしめ返した。
「フォルノス・・・無事でいて・・お願い」
「・・俺がお前を置いて行くわけないだろう。安心しろ」
その言葉にハッとした。
センジュは目を見開いた。
「どうした?」
センジュは自分に憤りを感じた。
すぐにラファエルの腕を解く。
「ごめんなさい・・でも、ありがとう」
「少しは楽になったか?」
「うん・・」
_顔や声が同じでも、絶対にこの人はフォルノスじゃない。
だって、フォルノスは仕事馬鹿で、私に甘い言葉なんて絶対に囁かない。
「何か力になろうか?」
「え!?天使なのに?」
「フフ・・お前も半分天使だろ?」
「そうだけど」
「俺はお前が気に入った。本当は傍に置いておきたいが・・その涙は見たくないと思った」
_なにこの人・・・いい人!?
単純なセンジュはすぐに人を信じる。
散々その事で怒られてきたが、状況的にもラファエルの言葉にすがるしかなかった。
天使でも飛べるワケでもない、魔族でも力を発揮する事が出来ないのだから。
「あ、ありがとう・・出来ればウリエル伯父さんに見つからずに魔界に帰りたい」
「ああ、それくらいなら出来るだろう」
「・・本当に?」
「だがいいのか?魔王の呪いとやらは」
「う・・本当は伯父さんに解く方法を聞き出したかったんだけど・・さっきもめちゃって」
「ほう」
「伯父さんはママの体を使ってパパを貶める気なんだ・・そんな事させない」
「それは・・確かに穏やかじゃないな」
ラファエルは頷いた。不快そうだ。
「つまり、ウリエルは妹を使ってチクチクと魔王に嫌がらせをする気という事か」
「嫌がらせではない。倒すのだ」
ドクン
窓の外からウリエルの声が聞こえた。
思わずセンジュはラファエルの後ろに隠れた。
窓があき、ウリエルは部屋に入った。
「不法侵入だ。ウリエル」
「お前こそ、俺の姪を攫った罪がある」
センジュはびくつきながらもウリエルを見つめた。
ウリエルは怒りを必死に抑えている様だ。目から今にも炎を放ちそうな程ギラギラとさせていた。
それを抑える様にラファエルは言った。
「この子が可哀そうだと思わないか。お前に利用されるんだろう?」
「違う。センジュはアンジュの残した大切な子だ。残された俺の家族だ。天界で幸せに暮らしてもらいたい」
「幸せは誰かに押し付けられるものじゃないと思うが」
「黙れ、ラファエル。お前は何十年と職務もまともに務めず自堕落な生活を送っている。大天使の称号を持ちながらな。許しがたい行為だ」
_え!?この人大天使だったの!?凄い人なの!?
「そういうお前は、無駄に怒りを振るい・・憎しみを魔族に向けているだけだ。幼い子供の様にな。良い加減に目を覚ましたらどうだ?姪の前だ」
「ほざけ!大天使として俺は魔族を制するだけだ!悪を滅するのが俺の職務だ」
「そんな事いうと、この娘が怒るだけだぞ。発言は良く考えろ」
ラファエルの後ろでセンジュは頷いている。
「センジュ・・何故、解ってくれないんだ・・アンジュの娘なら」
「関係ない。誰の子だろうが、決めるのはセンジュだろう。自由にさせてやればいい」
ウリエルを遮ったラファエルの言葉がセンジュの胸に響く。
_ああ、この人。この人は信頼できる。見た目も中身もやっぱりフォルノスに似ている。
ラファエルの袖をぎゅっと掴むと、ラファエルは頷いた。
そして確信に迫った。
「魔王の呪いとはなんだ?俺にも教えろ」
「なぜそれを・・それを知ってどうする!?今、魔王を抑えている封印を解けば・・魔王は天界に攻めてくるんだぞ!?」
それにはセンジュが食い下がった。
「どうして攻めてくるって思うの!?確証があるの!?私がパパを説得する!絶対にそんな事させないから!!」
「駄目だ!魔王を信じるな!17年前の事を絶対に許してはならない!」
「伯父さん・・ママはそんな事望んでないのに・・」
「アンジュは純粋な娘だったんだ。それを魔王は・・洗脳し汚した!」
_ああ、駄目だ。怒りや憎しみが勝って・・何を言っても通じない。フォルノスが言ってた。ウリエルの通る道は業火で焼き尽くされるって。周りが見えていないんだ・・。
「教えてくれないのなら・・私は伯父さんを・・」
その言葉はラファエルによって遮られた。手で口を覆われた。
「同じになるな。引っ張られてどうする」
「ラファエル・・」
「何か、手立てはあるハズだ」
その言葉はとても力強かった。
とても信頼できる声だった。
「ではウリエル、俺は大天使として職務を全うする。俺は癒しの天使だ。困っている者が居れば、手を貸す」
ラファエルがウリエルに手をかざすと、ウリエルの体が硬直した。
「ラファエル・・お前・・熾天使様の命に・・背くのか・・」
「お前は熾天使のいいなりだ。大天使ならば、もっと冷静になれるハズだろう」
「馬鹿な・・この命に背けば・・お前は堕天使として追放されるぞ」
「ラファエル!?」
ウリエルの言葉にセンジュの顔は青ざめる。
_こんないい人を巻き込んじゃ駄目!!絶対駄目!!
「ラファエル、やめて!自分でなんとかするから関わらないで!」
「もう、遅い」
とラファエルはニヤリと笑った。
ラファエルはセンジュを肩に担ぐと、窓から外へと出た。
「ラファエル!センジュを渡せ!!」
「愚かだな・・アイツももうずっと・・呪われている。17年前からな」
「伯父さん・・」
ラファエルはセンジュを抱き上げたまま翼を広げた。
魔界へ繋がる門を目指した。
「ねえ、本当にいいの!?ラファエルはどうなるの!?」
「なんとかなる。俺の事より、自分の事を考えろ」
「駄目だよそんなの!!ラファエルはのんびり暮らしたいんでしょ!?」
「ああ、そのつもりだが」
門までたどり着くと、そこには武装した天使達が立っていた。
20数名といったところだろう。
「ラファエル、何処に行くのかな?」
「ミカエルか」
門の前で待機していたのは大天使ミカエルだった。
「その子、魔王の子だよね。ボクのコレクションにするから置いて行って欲しいな」
にっこりと美しい顔で微笑むミカエルに、センジュは恐怖を覚えた。
美しすぎて怖いとはこの事だ。
フォルノスと同じ声にセンジュは従った。
ラファエルはセンジュの髪をゆっくりと撫でた。
「・・・センジュ」
ドキン
耳元で囁かれたその声はフォルノスそのもの。
目を閉じ、視界を遮る事で更にフォルノスを感じた。
「センジュ・・」
ほろりほろりと温かな涙が頬を伝う。
センジュはラファエルを抱きしめ返した。
「フォルノス・・・無事でいて・・お願い」
「・・俺がお前を置いて行くわけないだろう。安心しろ」
その言葉にハッとした。
センジュは目を見開いた。
「どうした?」
センジュは自分に憤りを感じた。
すぐにラファエルの腕を解く。
「ごめんなさい・・でも、ありがとう」
「少しは楽になったか?」
「うん・・」
_顔や声が同じでも、絶対にこの人はフォルノスじゃない。
だって、フォルノスは仕事馬鹿で、私に甘い言葉なんて絶対に囁かない。
「何か力になろうか?」
「え!?天使なのに?」
「フフ・・お前も半分天使だろ?」
「そうだけど」
「俺はお前が気に入った。本当は傍に置いておきたいが・・その涙は見たくないと思った」
_なにこの人・・・いい人!?
単純なセンジュはすぐに人を信じる。
散々その事で怒られてきたが、状況的にもラファエルの言葉にすがるしかなかった。
天使でも飛べるワケでもない、魔族でも力を発揮する事が出来ないのだから。
「あ、ありがとう・・出来ればウリエル伯父さんに見つからずに魔界に帰りたい」
「ああ、それくらいなら出来るだろう」
「・・本当に?」
「だがいいのか?魔王の呪いとやらは」
「う・・本当は伯父さんに解く方法を聞き出したかったんだけど・・さっきもめちゃって」
「ほう」
「伯父さんはママの体を使ってパパを貶める気なんだ・・そんな事させない」
「それは・・確かに穏やかじゃないな」
ラファエルは頷いた。不快そうだ。
「つまり、ウリエルは妹を使ってチクチクと魔王に嫌がらせをする気という事か」
「嫌がらせではない。倒すのだ」
ドクン
窓の外からウリエルの声が聞こえた。
思わずセンジュはラファエルの後ろに隠れた。
窓があき、ウリエルは部屋に入った。
「不法侵入だ。ウリエル」
「お前こそ、俺の姪を攫った罪がある」
センジュはびくつきながらもウリエルを見つめた。
ウリエルは怒りを必死に抑えている様だ。目から今にも炎を放ちそうな程ギラギラとさせていた。
それを抑える様にラファエルは言った。
「この子が可哀そうだと思わないか。お前に利用されるんだろう?」
「違う。センジュはアンジュの残した大切な子だ。残された俺の家族だ。天界で幸せに暮らしてもらいたい」
「幸せは誰かに押し付けられるものじゃないと思うが」
「黙れ、ラファエル。お前は何十年と職務もまともに務めず自堕落な生活を送っている。大天使の称号を持ちながらな。許しがたい行為だ」
_え!?この人大天使だったの!?凄い人なの!?
「そういうお前は、無駄に怒りを振るい・・憎しみを魔族に向けているだけだ。幼い子供の様にな。良い加減に目を覚ましたらどうだ?姪の前だ」
「ほざけ!大天使として俺は魔族を制するだけだ!悪を滅するのが俺の職務だ」
「そんな事いうと、この娘が怒るだけだぞ。発言は良く考えろ」
ラファエルの後ろでセンジュは頷いている。
「センジュ・・何故、解ってくれないんだ・・アンジュの娘なら」
「関係ない。誰の子だろうが、決めるのはセンジュだろう。自由にさせてやればいい」
ウリエルを遮ったラファエルの言葉がセンジュの胸に響く。
_ああ、この人。この人は信頼できる。見た目も中身もやっぱりフォルノスに似ている。
ラファエルの袖をぎゅっと掴むと、ラファエルは頷いた。
そして確信に迫った。
「魔王の呪いとはなんだ?俺にも教えろ」
「なぜそれを・・それを知ってどうする!?今、魔王を抑えている封印を解けば・・魔王は天界に攻めてくるんだぞ!?」
それにはセンジュが食い下がった。
「どうして攻めてくるって思うの!?確証があるの!?私がパパを説得する!絶対にそんな事させないから!!」
「駄目だ!魔王を信じるな!17年前の事を絶対に許してはならない!」
「伯父さん・・ママはそんな事望んでないのに・・」
「アンジュは純粋な娘だったんだ。それを魔王は・・洗脳し汚した!」
_ああ、駄目だ。怒りや憎しみが勝って・・何を言っても通じない。フォルノスが言ってた。ウリエルの通る道は業火で焼き尽くされるって。周りが見えていないんだ・・。
「教えてくれないのなら・・私は伯父さんを・・」
その言葉はラファエルによって遮られた。手で口を覆われた。
「同じになるな。引っ張られてどうする」
「ラファエル・・」
「何か、手立てはあるハズだ」
その言葉はとても力強かった。
とても信頼できる声だった。
「ではウリエル、俺は大天使として職務を全うする。俺は癒しの天使だ。困っている者が居れば、手を貸す」
ラファエルがウリエルに手をかざすと、ウリエルの体が硬直した。
「ラファエル・・お前・・熾天使様の命に・・背くのか・・」
「お前は熾天使のいいなりだ。大天使ならば、もっと冷静になれるハズだろう」
「馬鹿な・・この命に背けば・・お前は堕天使として追放されるぞ」
「ラファエル!?」
ウリエルの言葉にセンジュの顔は青ざめる。
_こんないい人を巻き込んじゃ駄目!!絶対駄目!!
「ラファエル、やめて!自分でなんとかするから関わらないで!」
「もう、遅い」
とラファエルはニヤリと笑った。
ラファエルはセンジュを肩に担ぐと、窓から外へと出た。
「ラファエル!センジュを渡せ!!」
「愚かだな・・アイツももうずっと・・呪われている。17年前からな」
「伯父さん・・」
ラファエルはセンジュを抱き上げたまま翼を広げた。
魔界へ繋がる門を目指した。
「ねえ、本当にいいの!?ラファエルはどうなるの!?」
「なんとかなる。俺の事より、自分の事を考えろ」
「駄目だよそんなの!!ラファエルはのんびり暮らしたいんでしょ!?」
「ああ、そのつもりだが」
門までたどり着くと、そこには武装した天使達が立っていた。
20数名といったところだろう。
「ラファエル、何処に行くのかな?」
「ミカエルか」
門の前で待機していたのは大天使ミカエルだった。
「その子、魔王の子だよね。ボクのコレクションにするから置いて行って欲しいな」
にっこりと美しい顔で微笑むミカエルに、センジュは恐怖を覚えた。
美しすぎて怖いとはこの事だ。