魔界の華は夜に咲く
ラファエルは冷静に言った。

「この娘に罪はない。あるとすれば、我々と魔族。両方だろうな」

「流石はラファエルだね。心優しい。優しすぎて戦えない臆病者だね。もうずっと引きこもっていたんだろう?」

ミカエルは楽しそうに笑っている。

「どうとでも言うがいい。17年前の事・・お前も覚えているだろう」

「ああ、先陣を切って戦ったのはボクだからね。お前はどうやら高みの見物だったんだろ?血を一滴も流さずに」

「この娘はその時の過ちを正すために生まれてきた・・と、俺は思った」

「へえ・・そうなんだ」


ラファエルの言葉にセンジュは終始涙を流した。

護られている気がする。言葉の一つ一つが心に響く。


「お前の母も、そう思ったんじゃないか?」

「ママも・・」

「17年前の惨劇を魔王に聞いてみろ。真実はそこにしかない」

勇気づけられ、センジュは深く頷いた。

「うん!」

「この娘を行かせろ」

センジュを降ろしたラファエルはミカエル達に手をかざす。


「このボクに歯向かうとか・・ラファエル。悲しいよ」

「俺もだ。俺は出来ればのんびり女と戯れていたかった」


ミカエルが腰に差していた剣を抜くと、その剣に雷が降りた。


「大天使ラファエルを堕天使とみなし、天界から追放する!」


近くにいた天使たちも剣を取り空へ掲げた。

雷に囲まれる。

「そんな!止めて!ラファエルは関係ない!!」

叫ぶセンジュを見てミカエルは楽し気に笑った。


「フフ、じゃあ・・センジュ。ボクの所へおいで。そうしたら前言撤回してあげるよ」

「え・・!?」


_ラファエルが助かるの!?


「馬鹿、挑発に乗るな。あいつのコレクションはな。捕らえた魔族を金で固めて飾る事だ!」

「ひ・・酷い・・」

「フフフ・・可愛い魔族しか興味ないよ。センジュは魔王の娘だから、特等席に飾ってあげるね」


_絶対に嫌だ!!!



こんなにも天使が恐ろしいとは思いもよらなかった。

自分の想像を遥かに超えている。

ラファエルの様な清く正当な者ばかりだと想像していたのだ。

人間界にいたころ、天使とはそういうものだと教えられてきた。


「こんな・・こんな優しさのかけらも感じない場所!あなたも人間の信じる天使とは思えない!」

「フフ・・ハハハ・・人間は綺麗ごとを並べていれば天に昇れると信じているからね。勝手だよね。見た事もないくせにあがめちゃって」


_伯父さんよりもこの人もっとヤバい。絶対に近づいちゃダメだ!!


「さて、どうするのかな?ラファエル?センジュ?」


ドクン


ドクン


人数的にも不利。

じわじわと囲まれる。

雷が音を立てる。



_こんな時に力さえ出せれば・・この人を護れる力があれば・・・。


目を閉じ、センジュは祈った。

体に意識を全部集中させ祈った。


_お願い・・お願い。私はパパの娘でしょ!?パパからきっと力を受け継いでいるでしょ!?


バリバリ・・ドンッ
という激しい音が響く。

ラファエルの体に雷が落ちる。

「ぐ・・門の方へ走れ!」

「うん!」

ラファエルはセンジュの手を引き、門へ走った。

走っている最中もずっとセンジュは祈った。


_お願い!ラファエルを護りたい!私を助けてくれた人を・・!!


バンッ!


門が開かれた。

「行け!」

「行かせないよー」

ラファエルの声と同時にミカエルは剣を振り下ろした。

センジュ目掛けてだった。

_あ!!早すぎるっ!


「センジュ!!!」
「センジュ!!!」


キイインッ!!

金属音が響き渡った、と同時に当たりが一瞬まばゆく光り輝いた。


「何!?」
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