魔界の華は夜に咲く
「久しぶりだねセンジュ」


「え・・あ・・え・・ぇ?」


「と言っても、ほぼ初対面みたいなものだけどさ」


突如目の前に現れた男性に、思わず体が震えあがった。

近づいてくる足音も玄関からの気配もしなかった。


_幽・・霊?じゃないよね?


恐怖で硬直した。血の気がさっと一気に引いた。
そして握られた手をすぐに振りほどいた。
その手はひんやりとしてまるで氷みたいだった。


「あれ?どうしたんだい?」


「・・・・」


冷や汗がだらだらと額から流れる。

瞬きも忘れるほど彼女は恐怖に怯えていた。


「あー、ごめんごめん。いきなり過ぎたね」


にこりと笑いながら彼女の前にしゃがんだ。

年は見た目30代後半から40代の男だ。

一見優しそうに見えるその瞳は、異様に強い光を帯びていた。

どうやら足は付いている。幽霊ではなさそうに見えた。


「あの・・・?」


ゆっくりと彼女は起き上がり、男性の前に正座した。


_もしかしてママの知り合い?・・私が知らない親戚の人かな?



おずおずと控えめに質問する。


「あなたは・・どなたですか?」


彼女の問いにあっさりと彼はこう答える。


「センジュ、私はお前の父親だよ」


にこり、と。

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