魔界の華は夜に咲く
ぺろり。
とセヴィオは唇を離すと、息をきらしているセンジュの頭を撫でた。


「わりぃわりぃ。度が過ぎた。あんたが子ウサギみたいでつい可愛くて・・うっ」


目を合わせるとぼろぼろと大粒の涙を零すセンジュが見えた。


「き、嫌い・・あなたも・・フォルノスも、あとの二人も・・皆勝手すぎ・・・絶対誰も選ばない・・」


「わりぃって」


セヴィオは頭を掻きながらため息をついた。やりすぎたと反省した。
半分悪ふざけもあったのは認めるが、大粒の涙を見て罪悪感が膨らんだ。
センジュはセヴィオを睨みつける。
一生許さないと言わんばかりの顔だ。


「そんな顔すんなよ。ホントに悪かったって」


セヴィオはセンジュの体を抱きしめた。


「ちょ・・離し・・」


「でも、あんただって」


「私がなに?」


「存在自体がいけねえんだよ」


「な!?」


_何それ!?全然意味わかんないんですけど!?パパの娘だからって事!?


セヴィオは抱きしめたままセンジュの頭をあやすように撫でた。


「割と良い女だってコト」

「はい?」


セヴィオは頬に伝ったセンジュの涙を自分の袖でぬぐった。


「男を喜ばせちまう才能もってんじゃねえ?さっきの色気だってあざとすぎるだろ」


「は、はいい!?」


_色気!?何それ!?皆無なんですけど!!


「あんな風に誘われたら男は喜ぶに決まってる」

「なにそれ!?誘ってないし!!」

「そゆとこな」

「は!?」


初めて言われた言葉にセンジュは戸惑った。理解不能だ。
そもそも学校の男子と話をまともにしたことなどない。
実は男女問わずセンジュは一目おかれた存在だった。
近寄りがたい美しさを秘めているとクラスメイトから崇められていた。
などと、本人は知るわけがない。
故にまともな友達が出来なかった。
自分は遊びにも誘ってもらえない程コミュ障なんだと一歩引いて生きてきたのだ。
< 43 / 155 >

この作品をシェア

pagetop