魔界の華は夜に咲く
見かねたセンジュは声を上げた。


「パ・・・パパ!」

「ん?どうしたんだい?」


張り詰めた空気が、ふわりと解放された。
センジュの声によって。
自分でも勇気ある行動に少し驚いている。


「あの・・ね、私・・もっとよく魔界の事知りたい。ただ、ここで暮らすだけじゃなくて・・」

「んー?」

「その・・四大魔将の人達の事・・もっと知りたいし・・」

「・・姫・・?」


その言葉にエレヴォスは目を見開いた。


「だから・・その・・・」



_どうしよう・・上手く伝えられない・・パパの目が怖くて。でも・・。



戸惑うセンジュの頭を魔王はよしよしと撫でた。


「そっか、流石はアンジュの子だね。優しい所までそっくりだ」

「パパ・・?」

「セヴィオが心配になったんだろう?でもそれは彼の問題だからね」


ドキン


当たりまえだが、簡単に見抜かれている。
いとも簡単に話をすり替えようとしている魔王(パパ)だ。


「今日の訓練はどうだった?」

「あ・・ええと」

「ん?」


ニコニコしているが、やはり少し怖い父だ。


_が、頑張れ私!


センジュは意を決して伝えた。


「セヴィオは今日私を助けてくれたの。訓練が上手くいかなくて・・だからセヴィオが今大変なら・・応援したい!うぐっ」


むぎゅっ。
ようやく言ったと思った矢先、魔王の胸に顔をうずめられていた。


「うんうん、わかった。じゃあ、応援に行こう!」

「え・・いいの?」

「うん。いいよ」


魔王の放ったその言葉にエレヴォスはぽかんとしている。
あり得ないと言った表情だった。
瞬きを何回も繰り返している。


「あの・・我が君?」

「エレヴォス、俺はセンジュと今から出かけてくるから夕食を用意しておいてくれ。そうだな、30分後でいい」

「30分後・・ですね。かしこまりました。」



あっけに取られていたが、エレヴォスは首を垂れ、ひれ伏した。


シュンッ!

と風の音が聞こえたと思うと、部屋から魔王とセンジュの姿が消えていた。


「クク・・ハハハ・・我が君を一発で動かすとは・・センジュ。あなたは素晴らしい存在だ。フォルノスに報告してやらねば・・ククク」


エレヴォスは高揚し笑いながら部屋を後にした。


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