魔界の華は夜に咲く
上着を脱ぎ、インナーのみになったセヴィオの体にはあちこちに小さな切り傷があった。


「痛そう・・」

「まあ、割と痛いって感じだな」

「素直なんだね、そこは」

「あんた、俺の事年下だと思ってねえ?」

「思ってはないけど・・なんか、素直じゃないイメージ。第一印象悪かったし」

「はー。まあ、いいけど」


センジュが血を優しくふき取り、慣れない手つきでおずおずとガーゼを当てていく。
正直痛々しくて見ていられないというのが本音だ。手が緊張で少し震えた。


「魔界の人って・・ううん、セヴィオは四大魔将だからこんな目に会ってるの?」

「四大魔将つーか、戦士ならこれが仕事だからな」

「悪い人を制する事が?」

「昔から魔界にも魔王様の意思にそぐわない輩もいる。それこそ裏でうごめいている奴らとか」

「そっか・・・」

「でも人間界でも同じだろ?悪いヤツがいて、それを取り締まるヤツもいるだろ?」

「いるけどさ、こんな風に体中傷だらけにはならないと思うよ・・普段は」

「人間界は平和なこったな」

「・・そだね。魔界よりは、ね」


悲し気に落ち込んだ顔のセンジュが気になった。
セヴィオには理解出来ない感情だからだ。


「俺はこんなの辛いとも思わないし、必然だと思ってる。そんな顔すんな」

「・・・」

「他の3人だって誇りを持ってやってるし。むしろ、そんな顔されたら侮辱と受け取られるって」

「ごめん・・」

「お前、そんな簡単に謝んな」

それでも変わらず切なそうな顔のセンジュだ。


「・・まあ・・今回ちょっとだけ、あんたの事が分かった気がするわ」

「・・・え?」


ふわり。
とセヴィオの唇がセンジュの頬に触れた。
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