魔界の華は夜に咲く
訓練所の的の前で先日と同じ様に手をかざしてみたものの、特になにも力は発揮されなかった。
それにはアルヴァンはただ頷くのみだった。


「まだ二回目だし、気長に行こう。もしかしたらセンジュは攻撃系の力ではないのかもしれないし」

「はい」

「魔王の娘という事で皆過度の期待をしているのだろうが、出ないものは出ないだろうしな」

「はい・・」

「落ち込む必要はない。力がないと決まったわけでもないし、そう焦る必要もないだろう」


その言葉にホッとした。


「ありがとうございます」

「まあ・・本当なら一人になった時に起きた危険を回避するために力は常に備わっていた方がいいのだろうがな」

「あ・・そうなんですね」



_なるほど、そういうことか。確かに自分で身を守れるに越したことはないよね。


「だが、我々も護衛に着く。安心しろ」

「はい、ありがとうございます」


ニコリ。
と白い八重歯を見せアルヴァンは頷いた。

センジュの目には真面目な大人に見えた。


「そうだ、まだセンジュは街には出向いてないだろう?」

「街・・ですか?はい」

「よしよし、この魔界の街を案内してやろう」


_魔界の街。名前だけ聞くとおどろおどろしいけど・・でも今後の為にも知っておかないとね。



「よろしくお願いします」

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