魔界の華は夜に咲く
アルヴァンの用意した馬車に乗り、センジュは街にたどり着いた。


「欧風だ・・」


外国に旅行など行った事もないセンジュはヨーロッパもテレビでしか見た事がない。

レンガで出来た家が並ぶ、緑あふれる街並みだった。



「別の国に来たみたい・・あ、別か」


独り言を言っているとアルヴァンが隣で笑いを堪えていた。


「可愛い発言だな。街を見ただけで目を輝かせて」


「え?だって・・日本から出た事もないし・・というか魔界って意外と人間界と同じ様な作りをしているんですね」


「そうだな。だがお前の住む国の様に発展している訳ではない。魔王がそれを許していない」


「どうして?」


「過度の発展は魔界を滅ぼす。便利になればなるほど魔族の戦いはより激しくなるだろうとお考えだ」


「へえ・・」


「否定する輩もいるが、あの方の力の前では無力だ。いくら現代の先進国の様な発展を遂げても一瞬で消え去るだろう」


「あ・・なるほど」


_山を消したって言ってましたもんね・・確か。


「このくらいで丁度いいと、皆思っているだろう」


「そうなんですね」


馬車から降りると木々に囲まれたレストランが見えてきた。

ガラス張りで出来た入り口には巨木が伸び伸びと立っている。


「ふわ・・綺麗」


「気に入ったか?」


「あ、はい」


アルヴァンはセンジュの手を取って中へと向かった。

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