魔界の華は夜に咲く
「お飲み物はいかがされますか?」

ウェイトレスがにこやかに伺うが、センジュは戸惑いを隠せなかった。

「ええと・・」

注文表を覗き込んだが魔界の文字は読めない。
言葉は通じてるのだが、文字は全く読める気がしない。
それを察したアルヴァンだ。


「姫は果物がいいだろう」

「あ、はい、それでお願いします」

「では俺のお気に入りを頼もう」

「かしこまりました」


アルヴァンがそう言うとウェイトレスは理解したように頷きテーブルを後にした。


_お気に入りがあるって事は本当に常連さんなんだ。


じっとアルヴァンを見つめると、アルヴァンは楽しそうにククと笑いを堪える。

「なかなか来れないので、実は内緒で配達してもらっている」

「え?内緒なんですか?」

「ああ。他の魔族にはバレたくないね。これでも民を束ねる四大魔将だからな」


_一般的な食事が恥ずかしいって事かな?



「どうぞ」


「あ、頂きます」


ウェイトレスが運んできたのは紅いジュースだった。


「美味しい・・これはカシスですか」


「ああ、酒にしても旨いがそのままでも何杯も飲める」

「凄く美味しいです」

「それは良かった」



アルヴァンはブラックコーヒーの様だ。
挽きたての香ばしい香りが漂う。


「昨日はセヴィオの屋敷に泊まったんだってな」


「ぶっ」


唐突に言われジュースを吹き出しそうになった。


「は、はい・・」


「俺が知っていて意外な顔してるけど、四大魔将は全員お前の事は共有する事にしている」


「え・・そうなんですか?」

「・・で?セヴィオはどうだった?」

「どうって言われても・・・」

「上手かったか?」

「んぐっ・・何がですか」


また吹き出しそうになった。


_突然何を言い出すの!?



「何って・・セッ_」

「昼間から何言ってるんですか!!」

「流石に気になってしまってな」

「ええっ!?」


アルヴァンの人差し指がセンジュの唇を突いた。



「一番初めにキスしたのは俺だから、な」


ドキン



一番避けたい話題に直行した。



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