地味で根暗で電信柱な私だけど、ちゃんと守ってくれますか?
 イブの夜はほとんど眠れなかった。

「ふわぁっ」

 理工書のフロアのレジカウンターに立っていた私こと清川ゆかりはつい欠伸をしてしまう。それを目ざとく見つけたのか横にいた後輩の長野ちゃんがにやにやしながら声をかけてきた。

「ゆかりさん、昨夜はお楽しみだったみたいですねぇ」

 彼女はこちらにいやらしそうな視線を向けてきた。いつもならくりくりお目々の可愛らしい娘なのにどこかの怪しげな魔女のようである。

 私はベッドの上の佐藤さんの獣のような荒々しさを思い出し、かぁーっと顔が熱くなった。

 頭の半分で暖房が効きすぎるからだと言い訳するが、もう半分にいる軽く疼いた女の私がふんと鼻で笑う。

 まだ彼が欲しくて堪らないの?

 と、声が聞こえそうだった。

「いーなー、あんなイケメンが彼氏だなんて羨ましいですよぉ」
「長野ちゃんだって彼氏いるんでしょ?」
「うーん」

 彼女はぴっと二本指を立て、交互に指を折ったり伸ばしたりした。

「今は二人のどっちかに絞ろうかなってところですかねぇ。ワイルドな人もいいし、知的な人も捨てがたいんですよぉ」
「えーと」

 二股の二文字が浮かんで私は軽く目眩を覚える。頭を振って気を取り直した。

 念のため訊いてみる。

「その二人の両方と付き合ってる訳じゃないんだよね?」
「ん? 付き合ってますけどぉ」
「……」

 どうしよう。

 私、この娘についていけない。

 それともモテる女ってこういうものなのかな?
 
 
 
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