P.S.
それなら、彼女と自分との違いは何なのか。男は無意味と思いつつそれを思考した。
年齢、性別、姿形……基本的に違い過ぎる。そういった違いではないようだ。
結局答えの出なかった男が、今まさに訊ねようとした時、先に少女が答えを出してしまった。
「……私は雨宮 暝。名前くらい聞いたことあるでしょう?」
雨宮 暝 〈あまみや めい〉
確かに聞いたことのある名前に怪訝に思いつつ、記憶の中を捜す。
そしてはっとした。
雨宮といえば、このレインズグループの代表取締役──つまり社長の苗字ではないかと。
「雨宮社長の御令嬢だったか」
「あなたは?」
暝の興味の対象は、どうやらこの男の素性へと変わったらしい。首を傾げながら訊ねた。
「柏木 優聖。一応、此処の経営者側の人間だ」
そう言って優聖はせめてもの礼儀として、胸元の内ポケットから名刺を取り出し、彼女に手渡した。
暝は少しの間その名刺を見て硬直していた。やっぱりかと優聖は溜息を吐く。
「専務取締役……あなたが?」
「それにしては若過ぎるって言いたいのか?よく言われるよ」
柏木 優聖 〈かしわぎ ゆうせい〉
彼は弱冠27歳にして、その溢れる才気を雨宮社長に見抜かれ、専務取締役という大役を務めるエリートだ。