P.S.
 
 それなら、彼女と自分との違いは何なのか。男は無意味と思いつつそれを思考した。

年齢、性別、姿形……基本的に違い過ぎる。そういった違いではないようだ。

 結局答えの出なかった男が、今まさに訊ねようとした時、先に少女が答えを出してしまった。

「……私は雨宮 暝。名前くらい聞いたことあるでしょう?」


雨宮 暝 〈あまみや めい〉

 確かに聞いたことのある名前に怪訝に思いつつ、記憶の中を捜す。

そしてはっとした。

 雨宮といえば、このレインズグループの代表取締役──つまり社長の苗字ではないかと。


「雨宮社長の御令嬢だったか」

「あなたは?」

 暝の興味の対象は、どうやらこの男の素性へと変わったらしい。首を傾げながら訊ねた。


「柏木 優聖。一応、此処の経営者側の人間だ」

そう言って優聖はせめてもの礼儀として、胸元の内ポケットから名刺を取り出し、彼女に手渡した。

暝は少しの間その名刺を見て硬直していた。やっぱりかと優聖は溜息を吐く。


「専務取締役……あなたが?」

「それにしては若過ぎるって言いたいのか?よく言われるよ」


柏木 優聖 〈かしわぎ ゆうせい〉

 彼は弱冠27歳にして、その溢れる才気を雨宮社長に見抜かれ、専務取締役という大役を務めるエリートだ。
< 3 / 3 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop