翔んでアルミナリア
さらにこの禁忌にはだめ押しがあり、禁を犯すと神隠しにあってしまうというから、なかなかに恐ろしい。

わたしは無難に、志望する大学に行けますようにと、心の中で願いごとを唱えた。

一番の見所である点火と祈念が終わると、人の輪がほどけてゆく。
わたしは束の間、燃え上がる櫓に見入っていた。
暗闇を照らす橙色の炎。電気がなかった時代には、灯りと暖を与えてくれる唯一の存在であり、ときに業火と化して畏怖の対象にもなったことだろう。
太古の人が信仰し現代にまで受け継がれている意味を、理屈でなく感じる。

「出店でも見ようか?」と蓮くんに声をかけられる。こちらに顔を向けている彼の横顔が櫓の炎に照らされて、睫毛が鋭く細い影を作っている。

「うん」
DNAの記憶やらなんやら浸っていた感慨はどこへやら、すぐに食い気に向いてしまった。

広場から続く大通りに出店が並んでいるはずだ。
< 10 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop