翔んでアルミナリア
「実花子、なに願いごとしたの?」
蓮くんが訊いてくる。

いつからか彼はわたしを呼び捨てにするようになった。うがった見方をすれば、それは三歳年下の彼の強がりのようにも、距離の近さを誇示しているようにも感じられる。
わたしは頑なに、くん付けを崩さない。彼とのお出かけのために、浴衣は着ない。
それでも持っている服の中ではおしゃれなプリーツスカートを履いてきたのは、せめてもの罪滅ぼしか。

「志望する大学に行けますように…って、まだ何にも決めてないんだけどね」

「受験するの?」

「できれば指定校推薦で行けるといいな。受験勉強したところで、たかが知れてるし」
そのためには内申点が重要だ。

なるほど、と頷く彼に「蓮くんは、願いごと何にしたの?」と訊いてみる。

きゅっとくちびるを引き結び、わたしから視線を外す。

言いたく…ないのか。追求する気はないけど、蓮くんはなにを願ったんだろう。
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