翔んでアルミナリア
エレオノア姫だけが確信に満ちた口調で「ということは、進路は右手側になります」と、さっそく歩みを進める。

「確かなのか」
皇帝が声をかける。

「はい、カリンガの王宮の庭園で、似たような宝探しをして遊んだものです。イシュマを辿ると、大好きなお菓子が隠してあったのです。子どもの頃はただの遊びだと思っておりましたが」

ザンテ語の習得、イシュマの見分け方。すべては王家の宝を受け継ぐためだ。
カリンガ王家にとって、宝の存在がどれだけ重要なのか、ひしひしと伝わってくる。

馬を下り、手綱を引きながら足元の悪い岩場を徒歩での進行になった。
先頭をゆくエレオノア姫は、迷いなくしっかりとりた足取りだ。

そういえば「なかなかの健脚ね、ミカコ」と後宮の庭園で微笑んでいた姫様は、息を切らしている様子はなかった。
後宮から外に出ることができなかった数年のあいだも、柔弱にはならなかったのだ。
思えば姫様は立って歩いていることが多かったと、ようやく気づく。
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